Liar (2)【名探偵コナン】 (ページ38)

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重い瞼_3 ページ38

「あの…お客様、すみません」

申し訳なさそうな声に顔を上げると、
菜々が困ったような表情で目の前に立っていた。

『え？』

「申し訳ないのですが、当店、18時で閉店なんです…」

『え…』

驚いたようにPCの隅の時計に目をやるA。
そこには18:06の文字が映し出されていた。

集中していたPCのディスプレイから顔を上げ、周囲を見渡すと、
もう他には客はいなくなっていた。

すでに閉店時間は過ぎている時間だが、
…待っていてくれた、ということだろう。

『…あ、すみません。知らなくて…。
ごめんなさい。すぐ、出ますので』

慌ててノートPCを片付け、
ほんの少しだけ残っていたコーヒーを飲み干したAは、
そのまま席を立とうとしたのだが、

「あの、大丈夫ですか…？」

という声に、不思議そうに菜々の顔を見つめた。

『え？』

「すみません。でも、何だか顔色が悪いようなので…」

そんなに酷い顔をしているのだろうか、と、
Aは困った顔をしたが、
眠そうな瞼を強くこじ開けるように見開くと、
ニコリと笑い、“大丈夫ですよ”と答えた。

そして、
申し訳なさそうに財布から代金を支払い、
迷惑をかけないようにと焦った様子で店を出て行くA。

『…あ…』

少し前からどうやら雨が降り出していたようで、
地面がびっしょりと濡れていた。
そして、現在進行形で小雨が降っている。

『今日、雨って言ってたっけ…』

午前中も然り、
店に来る前までは晴れていたはずだ。
カバンに手を入れると、そこには折りたたみ傘があった。

(…入れておいて良かった。)

予報に関係なく、念の為カバンに入れているコンパクトな傘を差し、
瞼の重さにつられるように
少し俯き加減で、入口横の屋根から歩き出したAだったが、

「ん？アンタ…」

正面から聞こえた声に、ゆっくり顔を上げた。

「…月島、だったか。」

『…松田さん』

思い返せば、何度も顔を合わせている人物。
そして、あの事件で事情聴取を受け、
彼が捜査一課の刑事だということを知ったA。

黒い傘を差したその人物は、
何故か雨なのにサングラスをかけている。
しかし、営業課長であるAは、人の容姿や名前を覚えるのはそれなりに得意で、
松田とすぐに気づいた訳だ。

そして、サングラスのせいか、その雰囲気のせいか、
何だか随分威圧感のある刑事だ、と、
Aは思った。