よそよそしい_4 ページ34
Aを最初に見たのは、あのBarだった。
1人で、不機嫌そうにカクテルをハイペースで飲んでいた。
その後見かけたのは、どこかの居酒屋だった気がする。
中年の男に肩やら腰に触れられ、
貼り付けたような笑顔で抵抗できずに、
それでも明らかに困っているような様子だった。
その後、このBarで見かけた彼女は、
同じ男にまたも身体を触られるような状態で、強く抵抗出来ずにいる姿。
思わず助けに入るように2人の間に入ったものの、
“そういうのは必要ない”などと、
彼女は何やら悪態めいた様子で、
実は口の悪いじゃじゃ馬のような女だった。
そして、あの夜。
襲われて、ナイフで切りつけられて、
大丈夫じゃないことなど明らかなのにそれでも、
“大丈夫”、と強がる女だった。
あの夜、通報があったという現場が自宅にあまりにも近かったこと、
そして、通話口の声から、通報者はおそらく若い女性という情報から、
嫌な予感がしたのだ。
そして駆けつけてみれば、その嫌な予感は、
――的中した。
最後まで送って行かなかったことを、後悔した。
送っていく、などと言えば、
断られることは目に見えていたとはいえ。
そして事件の翌日、
松田や佐藤から、Aの怪我は全治1ヶ月だと聞いた。
“切られた”というよりは、”刺された”に近いはずだ。
この手で止血をするように押さえた彼女の腕。
そこから溢れる血の量から、かなり深い傷だったはず。
しかし、佐藤から聞いたのは、
仕事は休まず普通に生活しているそうだ、ということ。
そして、
怪我の様子が、Aの様子が気になり、
彼女の自宅の場所を聞き出した。
貴方のせいではないと、
何度も強調するような言葉をAが口にしていたとはいえ、
やはり萩原にとっては、彼女の様子が気になっていた訳で。
お礼を言って欲しかった訳じゃない。
じゃあ、どうしたかったのだと言われれば答えられない。
それでも、
あんな風に、急によそよそしい雰囲気でお礼を言われ、
萩原は何故かわずかに息苦しさを感じ、
もう一度、くしゃりと顔を歪めたのだった。
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作者名:white12 | 作成日時:2019年12月5日 19時