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あの夜の ページ46

『…はぁ…』


吐き出す息はもう、白くはない。

萩原の自宅だと思われるマンションは、
Aのマンションから歩いて数分の距離だ。

何故、部屋を出てきてしまったのか分からない。
そもそも、本当に彼があのマンションに住んでいるかも分からない。
部屋も、もちろん。

でも、何故か身体が動いてしまった。


『…近い…し、何となく行ってみようと思った、だけ…よ』


自分に言い聞かせるように呟くA。
良く考えれば、以前、お礼を言うために連絡先を聞こうと考えたように、
佐藤刑事に連絡すれば状況を教えて貰えるかもしれないのに。
いや、一般人にそう簡単に情報を教えて貰えるとは思えないのだが。

そもそも、何故彼の安否が気になるのかは、
――分からない。


ゆっくり足を進め、
以前萩原が入っていったマンションの前へと向かうA。
そして――、

小さく震え始めた。

『…あ…』

部屋を出てきたときは、確か22時を回っていた。
街灯はちらほらあるものの、当然外は真っ暗だ。


ふっと、脳裏にフラッシュバックするのは、
3週間前の夜のこと。


この道で。
あのフードの男に襲われたときのこと。

あの夜のように、
今まさにあの男に追いかけられているかのように、
小さく震えながら後ろを振り向くA。



――当然、後ろには誰もいない。
通行人が1人いるだけだ。

それでも、
呼吸が浅くなり、
小さな震えは止まらない。


(…夜、この道、一人で歩かないように…してたのに…)


そう。
無意識に避けていた道なのだ。
あの夜のことを思い出してしまうから。

小さく震える手をキュッと握りしめ、
もう帰ろうと同じく小刻みに震える足を踏み出した時、

「…アンタ、どうかしたのか?」

後ろから声をかけられ、
Aはビクッと肩を震わせた。

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設定タグ:名探偵コナン , 萩原研二 , 警察学校組   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:white12 | 作成日時:2019年12月5日 19時

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