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忘れてた。 ページ28

「月島さん、この間はご馳走様でした。
あの、明日会議あるじゃないですか。ちょっと資料見ていただきたいんですけど――」

翌日のCorsoのデスクで、
小声で話しかけてきた湯川に不思議そうな表情を向け、
とりあえず彼の手元の資料に目を通すA。


「それと、ありがとうございました。」

『え?』

「チョコレート、美味しかったです」


さらに小声でお礼を伝えてくる彼に、Aは”どういたしまして”、と笑い、
資料に対する指摘を口にした。


『ここ、グラフにした方がいいわよ。
それと、デザインの説明なら、もう少し大きくして見やすくした方が良いわ。』

「あ…、確かにそうですね。ありがとうございます!」

足早に自身のデスクに戻る湯川を見ながら、
Aは
、ふと何かに気づいたような顔をした。

(…忘れてた。)


A社の案件を手伝ってくれていた石田からも、
今朝、チョコレートや打ち上げのお礼を言われたA。
仮にも社会人だ。
そうしたお礼や挨拶は重要なコミュニケーション。
営業課長のAにとっては、それは尚更で。

頭に浮かんだのは昨夜のこと。
萩原が、松田とともに何やら歯切れが悪そうな様子で自宅に訪れ、
謝罪の言葉を述べてきた。

でも、肝心なことを伝えてなかった気がする。

助けてくれたお礼を。
そして――、止血のようにして腕を掴んでいてくれたこと。

Barで顔を合わせた時とは違う、
何やら随分心配そうな歯切れの悪い様子に、
Aはつい、気にしないでということだけを強調し、
口を開いてしまった。




米花中央病院に運ばれて、傷の手当てをされた際、
止血をされていたのかと問われた。
そうしていなければ、出血量が多くもっと酷いことになっていた、と、そう言われた。

治療後、病院に来たのは、
あの松田という刑事と、佐藤と名乗った女刑事だった。
その場で事情聴取を受けた訳だが、そこには萩原の姿は無かった。
男を捕まえたのは、おそらく萩原なのだ。
彼も事情聴取、というやつを受けていたのだろうか。


(…刑事じゃないって言ってたけど、
…何だっけ。交通課、とか?交番のお巡りさん…とか。そういうことかしら)


そんなことを思い浮かべるAだが、
ふと気づいた、
お礼を伝えていない、という事実に、困ったように小さく眉をよせた。

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設定タグ:名探偵コナン , 萩原研二 , 警察学校組   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:white12 | 作成日時:2019年12月5日 19時

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