好奇心_4 ページ12
無言のまま歩き続けること15分。
以前、杯戸町のBarから歩いたことを思えばずいぶん近い距離だ。
そして、自宅マンションに近づいてきた頃、
じわっと何かがこみ上げ、Aはゆっくりと瞬きをした。
付いて来られているような不快な状況なはずなのに、
静かに隣を歩く男に
いつの間にか、ずっと車道側を歩いているその男に、
不覚にも、重ねてしまう。
こうして、デートの後には度々マンションまで送って貰っていたことを。
何度も、こうして夜道を歩いた、
康太のことを。
彼は、この男のように軽い雰囲気は一切ない、
大人しい男だったのだが。
可愛い女じゃなかったなぁ、と先ほど思い浮かべたセリフを、
再び心でつぶやくAは、
無意識にさりげなく萩原から顔を背け、
歩くペースを速めた。
そして――。
「じゃあ、気をつけて帰れよ」
『…』
2ヶ月前と同じだ。
白っぽいマンションの前でさらりと右手をあげる萩原は、
やはり、それ以上”送っていく”というような素ぶりは見せず、
マンションの中へと消えていった。
まるで、あと数分でAのマンションに着くことを知っているかのように。
あの男に対する、
多少の苛立ちがあるくらいが良かったかもしれない。
別れてしばらく経つのに、
アルコールのせいか、変な感傷に浸りそうになっていた自分を戒めるように、
Aは両手で軽く頬を叩いた。
そして、今日も特に口を開かず、付いてきた萩原。
ただ静かに歩くその男に、
それほど不快感を感じなかったのは何故なのか。
彼は一体何がしたかったのか。
やはり良く分からないような表情を浮かべるも、
Aは そのまま自宅マンションへと帰っていったのだった。
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作者名:white12 | 作成日時:2019年12月5日 19時