Corso_3 ページ7
『では、これから社に戻らないといけないので、ここで失礼しますね』
「え、そうなの?もう一軒行こうと思ったのになぁ。
あ、そう言えばさっきはたまたまいただけだって言ってたけど、
この間のBAR、本当はよく行くんじゃないの?
今度一緒に――」
ワインを2杯ほど口にしていただけのようだが、
もう既に顔の赤くなった北川に、
“すみません、急がないといけないので…”と柔らかく微笑むと、Aはさらりと頭を下げてその場を去った。
レストランでも聞かれた話。
先日、米花町のBAR Curiousで会ったときのこと、だ。
あの店にはよく行くのか。
実はお酒が強いんじゃないか。
一緒にいた男は彼氏なのか。
“そんなんじゃないですよ。“
“たまたま強いお酒を頼んでしまって。”
“ただの友達ですよ“
適当な返答と相槌を打ちながら笑顔で交わしたAだったが、
これはしばらく会うたび聞かれるな、と心の中で辟易していた。
お酒が飲める、などと知られてしまったら、色々と付き合わされることは目に見えている。
営業になってから、付き合いは大事だと理解はしているものの、
“お酒はあまり飲めなくて”ということにして、酒の席では先方に勧めることに専念してきた。
カバンから取り出したスマホを見ると、
ディスプレイに映し出された時間は、20:21。
Aは、終始浮かべていた笑みをすっと消すと、足早に駅へと向かった。
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作者名:white12 | 作成日時:2019年11月29日 22時