杯戸町の喫茶店_3 ページ27
「盛況だね。…ここのコーヒーはやっぱり美味いからね」
『…フフッ。いつもご来店ありがとうございます』
コーヒーとスコーンを堪能したAが、
レジに向かおうと席を立つと、
何やら楽しそうにカウンター越しに、先ほど注文の品を運んできた女性店員と会話をする萩原の声が耳に入ってきた。
特に気にする様子もなく、
Aがチラリと店員に視線を向けると、
先ほど注文を受けてくれた元気な女性が対応してくれた。
萩原がこちらに視線を向けてきた気がしたが、
それに応じることはしなかった。
(…スコーンも本当に美味しかったなぁ…。
また来たいけど、あの萩原って人が常連なら、
ちょっと…あんまり顔合わせたくないかな…)
店を出て、駅に向かうAは、複雑な表情を浮かべていた。
気に入ったお店に、
顔を合わせたくない人物のせいで足を運べなくなるなど…、
どれだけ振り回されてるのだ、と、Aはきゅっと唇を噛んだ。
なんだか、ウダウダ考えている自分に、
そろそろ飽きてきたかもしれない。
(…ちょっと…、そろそろ、…良い加減、
吹っ切れてきたかも…。)
北川のことが原因なのか。
萩原に言われた言葉が原因なのか。
Aは、
何かが剥がれ落ちたように、
目が覚めたように、パチパチと瞬きをすると、
スタスタと歩くペースを早めて駅へと向かったのだった。
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作者名:white12 | 作成日時:2019年11月29日 22時