杯戸町の喫茶店_2 ページ26
あの夜。
またも北川から助けて貰うかのような状況になった、あの日。
あれから5日が経っていた。
なぜ度々こう顔を合わせるのだ、と、
困った顔を浮かべるも、
萩原に言われた言葉を思い出し、ジワリと悔しさと苛立ちが混じった複雑な感情が湧き上がってきた。
「お待たせしました。
ブレンドコーヒーと、プレーンのスコーンです。
ごゆっくりどうぞ」
そんなAの前に、
良い香りとともに、注文の品が並べられた。
運んできたのは、
先ほど注文を受けてくれた元気な女の子とは別の、女性店員。
先ほど、萩原に話しかけられていた人物だ。
ふわりと微笑んで、”どうぞごゆっくり”と口にするその姿に、
整った容姿も合わさって、自然にこちらも口元が緩んでしまう。
(…こういう女性に憧れてたことも、あったなぁ…)
笑顔を浮かべながらも、
心の内では黒々しい気持ちを抱えるのが当たり前になったのはいつからか。
北川の顔を思い浮かべ、嫌な気持ちになりそうな自分を打ち消すように、
コーヒーカップに口をつけるA。
そして、その落ち着く味に、ふわり、と笑みを浮かべた。
紛れもなく、本心から。
そして、スマホを手に、
無音でシャッターを押すAは、
手早くディスプレイを操作すると、
今度はスコーンを頬張り、笑みを浮かべたのだった。
122人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:white12 | 作成日時:2019年11月29日 22時