酔っ払い_2 ページ39
『…あの…、お家…どこですか?』
「んー…」
『住所、言えますか?タクシー呼んで家に帰った方が…』
「ん...。タクシーは...、さっき…乗って帰ってきた、はず…なんだけどな…」
むにゃむにゃと寝言のように呟く”時田”。
Aは、タクシーに乗って帰ってきたということはこのあたりが家なのか、などと考えるも、
時田の家など知る由もなく。
もう一度聞くも、彼は住所を言える状況じゃ無さそうだ。
景光は、うっすらとバレないように目を開け、彼女の様子を伺っていた。
一応酒を飲んだとはいえ、当然潰れるほどじゃない。
その匂いも、ほんのり赤い顔も、
フェイク…だ。
『…警察…っていっても…』
そう呟いたAに、
ぐいっと力を込め、肩を支えるようにして壁沿いに立ち上がらせられた景光。
そして――、
『歩け、…ますか?』
彼女に支えられるはずがないのだ。
190 cmほどの景光の体を。
ただ、彼をこのままにはしておけない様子で、路地の壁を利用して、
歩けるかと尋ね、それを促そうとしてくるA。
「んー。だいじょ…ぶ…」
適当な酔っ払いの返事とともに、
軽くふらつかせた足で、適度にAの方にもたれ掛かりながら、
景光は彼女の誘導に従った。
そして――。
『…はぁ…、はぁ…。』
3分ほどが経ち、
景光がうっすら目を開けると、目の前――、数センチしかない至近距離には、
かなり乱れた吐息を吐き出すAの顔があった。
背中には、スプリングの効いたマットレスの感触。
景光が倒れるようにして座り込んでいたのは、彼女のマンションのほぼ目の前の路地。
彼女が見つけざるを得ない位置だった。
そこから1分もかからない自身のマンションに、
Aは、何とか”時田”を支えながら連れてきたのだ。
自身の部屋に。
自身のベッドに。
小柄なベッドは彼には手狭なようで、
ようやく横たえたものの、彼の足はベッドから優にはみ出していた。
そして、負担がかかったのだろう。
彼をベッドに横たえて、身体を離してもなお、しばらく乱れたままの息を小さく吐き出しているA。
その彼女を、電気のついていない部屋の中で、寝たふりをしながら細目を開けた景光が見つめていた。
――罠かもしれない、と念の為、警戒しているのだ。
148人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:white12 | 作成日時:2020年1月27日 20時