お誘い ページ37
2日後の公安警察。
「…フードを被ったあの格好は、
単に息抜きというか…、プライベートってことじゃないかと思うんだけど…な」
「公園でギターを弾いて歌っていただけ…か。
誰かと接触するような様子は?」
「そんな風には見えなかったな」
「ギターケースの中に――」
「ライフルは入っていなかった。ケースを開けたところも見てたからな。
…まぁ、小さな銃なら見落としていたかもしれねぇけど、それならわざわざギターケースでカモフラージュする必要もないだろ」
景光の報告に、
“そうか”と、降谷が小さく呟いた。
「それと、彼女が教えてくれた連絡先。綾倉Aとして契約されている電話番号だった。」
「…本人名義、か。」
「組織の人間が、外部の人間に簡単に”自分”の連絡先を教えたりしないだろ。
彼女はやっぱり――」
そう言いかけた景光だが、
「降谷さん!!例の宗教団体ですけど――」
それを遮るようにして、他の公安の人間が降谷に声をかけた。
「あぁ。分かった。
…悪いヒロ。話はまた改めて。」
「了解」
そして、デスクを離れる降谷の後ろで、
景光は、彼のデスクの上に溜まった書類、その横に並べられた3枚の写真に目を落とした。
(…綾倉達哉と、綾倉A、そしてシェリー…、宮野志保、か。)
逆にこちらから、シェリーについて彼女に問うつもりということだろうか。
意味深に並んだその3枚の写真に険しい視線を向け、
スーツからスマホを取り出し、ディスプレイを眺める景光。
(…来てない、か)
開いたのはショートメールの画面だ。
連絡先を教えてもらった後、すぐに送ったメール。
もちろん、公安が用意した、”時田”のスマホからだ。
“時田です。
連絡先を教えてくれてありがとう。
忙しいと思うけど、都合の良い日があったら連絡貰えたら嬉しいです。
ぜひ、今度こそご飯ご馳走させてください”
少し丁寧な、再度の食事のお誘いだ。
忙しいのか、あるいは、やはり承諾するつもりはないのか。
一度、Barに誘うことに成功したとはいえ、
そう簡単に距離を縮めることは出来なさそうだと判断した景光は、
何かを思案する素ぶりを見せた後、公安部へと戻っていったのだった。
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作者名:white12 | 作成日時:2020年1月27日 20時