フードの女_2 ページ34
(…もしかして…公園に行くのか…)
そして、やはり彼女の後を付けていく景光。
その予想は当たったようだ。
たどり着いたのは米花公園。
19時を回り、周囲はすっかり暗くなっている。
帰宅する人が1人歩いている程度で、人通りはすっかり少なくなっていた。
そして、Aは、
ベンチに腰掛けると小さな音でギターを奏で始めた。
フードをかぶり、足を組み、ギターに視線を落とすような格好。
そして――、
何かの歌を口ずさみ始めた。
〜♪
(…これ…)
木に隠れるようにして、その姿を見つめる景光。
小さな声でうまくは聞き取れないが、
そのメロディは、最初にこの場所で彼女を見かけたときに耳にした歌のようだった。
誰かに歌う訳じゃない。
フードを被ったまま、
視線はギターに落としたまま、ただ、口ずさんでいる。
そのゆったりしたメロディーと、彼女の少し低音で奏でられるその歌に、
景光は無意識に表情を和らげ、耳をすませていた。
そして、2分ほどが経ち、ピタリと音が止んだ。
接触するタイミングを見計らっていた景光は、
ふと我に帰ったように、思考を切り替えて彼女の前に足を踏み出した直後――
続いて耳に入ってきたギターの音色。
それは、先ほどとは随分と異なり、アップテンポな曲調のもので。
音量を上げたギターの音色に少々戸惑いつつ、
景光はそのままそっとAに近づいた。
「…ギター、上手なんだな」
『…!』
ピタリ、とギターの音が止んだ。
Aは景光と視線が合うと、それをパッと逸らし、
困ったように眉を寄せていた。
そして、
「ごめん!!」
と、ガバッと、大きく頭を下げる景光。
Aは面食らったように、目をパチパチとさせている。
「…この間は…、ごめん。
俺、気に触るようなこと…言ったよな」
『…』
「本当はすぐに謝りに行こうと思ってたんだ。
でも、連絡先も知らないし。
…仕事帰りに、あのビルの近くに行ったりもしたんだけど…、そう簡単に会える訳なくて。
偶然、この近くを通りかかって、…前にここで君を見かけたときのこと思い出して、公園に来てみたんだけど…、
本当にいるとは思わなかった」
良くもまぁ、こんなスラスラと話せるものだ。
と、自嘲気味に心の中で笑うようなことは、もうない。
景光にとっては、この手の演技は十八番だ。
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作者名:white12 | 作成日時:2020年1月27日 20時