フードの女 ページ33
5日後の金曜日。
景光は、他の案件の調査を進めつつ、
今日もAを監視するようにして研究所付近でビルの入り口に視線を向けていた。
やはり度々接触する訳にはいかない。
行動を監視しつつ、タイミングを見計らっているのだ。
先日、Barで忍ばせた盗聴器。
今度はカバンに忍ばせたのだが、そこから拾える音はやはりほぼ彼女の声ではなく、
キーボードや…、ガラスの音がほとんどだった。
自宅に帰った後も、誰かと電話をするような声も聞こえない。
聞き取れないだけなのかもしれないが、
本当に、ほぼ会話をしない生活なのか。
あるいは――、警戒されているのか。
(…研究に没頭していると、誰とも会話をしない日が続く、とか聞いたことあるしな…)
ただ、直接会話を交わすことで見えることは多い。
景光は、やはり、”彼女自身”が組織に関わっているとは、
彼女の意思でAPTX4869に関わっているとは、思えなかった。
そして――、
陽が落ちた直後、ビルから出てきたA。
(…少し、早い時間帯だな。)
他の案件のため、張り付いていられない日もあるが、
代わりに監視をしていた公安の人間の情報からも、
ここ2週間ほど、彼女がビルから出てくるのは22時を過ぎてからだ。
夜中になることも珍しくなく。
その後、自宅に戻り、再び研究所に戻ってくる日もあった。
世間でいう休日も、似たような生活を送っているようだった。
今日は何かあるのかと、景光は鋭い目で後を付けていった。
そして、15分後。
たどり着いたのは、彼女のマンションだ。
(…早い帰宅ってことか。
また、研究所に戻るのか…?)
様子を伺うこと10分。
マンションから出てきたのは、
――黒いフードの人物だった。
Aだ。
先ほど、マンションに入っていったAは、
ベージュのコートに、白っぽいスカートを履いていた。
どうやら着替えてきたようだ。
先ほどまで手にしていたカバンを手に、背中にはギターケースを背負っている。
普段は、男の景光にとっては、
化粧をしているのかどうか分からないくらいなのだが、今は彼にも分かるくらい、軽く化粧もしているようだ。
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作者名:white12 | 作成日時:2020年1月27日 20時