振られたな_3 ページ27
「…え…っと…」
『そういう使い方は、間違っていると、思います』
「…え?」
静かに視線を合わせ、
真剣にそう口にするAに、景光は少し戸惑った。
これは――、演技ではなかった。
『…確かに、それはAI技術では可能です。
既に実現されている。
…でも、そんなの、間違ってる』
「…」
『亡くなった人の声を使って…、利用して…、自分の、誰かの欲求を満たすなんて、
…間違ってます。科学技術はそんな風に使われるべきじゃない。』
急に真剣に言葉を紡ぎ始めたA。
そして、
『死んだ人を…、身勝手に蘇らせるような使い方…、間違ってると思います。』
そう口にした後、
まだ半分ほど残っているグラスをもう一度手にすると、
それを大きく傾けて一気に飲み干した。
「え――、ちょっ…と…」
『…ごめんなさい。帰ります。』
そして、千円札をカウンターに置くと、
コートを手に、それを羽織ることもせず足早にBarを出ていった。
急転したAとの会話に戸惑っている景光の視界に、
未玖を挟み、やはりこちら側に顔を向けている萩原の顔が映った。
“振られたな”
とでも言いたげに、哀れむような目を携えて軽く口角を上げている。
彼の隣に座る未玖は、
一瞬、口論のようになった会話に何事かとチラリと景光に視線をむけたものの、
さすがに知らない客だ。
見ないふりをするようにして、
エメラルド・ミストの入ったグラスを傾け、口を閉ざしていた。
(…死んだ人を…、身勝手に蘇らせる…か)
しかし、何より景光の脳裏に焼きついたのは、
Aが最後に口にした言葉だった。
予想外の展開だったとはいえ、得られた情報はそれなりにあったことで、
適当な頃合いを見計らい、萩原たちを残し、景光もまたBarを後にしたのだった。
148人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:white12 | 作成日時:2020年1月27日 20時