4869【名探偵コナン】 (ページ23)

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そして、
カウンターに差し出された2つのグラスを軽く合わせて乾杯をする2人。

「…本当に、助かったよ。何度も言うと、困らせちゃうのかもしれないけど。
これで最後な。…ありがとう」

『…いえ、本当に私は――』

「どういたしまして」

『え？』

「――の方が嬉しいんだけどな」

『…どう、いたしまして』

いたずらっ子のような、柔らかい雰囲気の景光に、
Aもまた笑みを返した。
しかし、その表情の裏で少し瞳が曇っているのを景光は見逃さなかった。

「この店、友達から話聞いてたんだけど、…来れて良かった。
スコッチも美味いし」

『…よく来る訳じゃ、ないんですか？』

「いや。ここに来たのは初めてだな」

スコッチ、という言葉を再び口にしたものの、やはり反応しないAに、
景光はどことなく楽しそうな雰囲気を崩さないまま答えた。

この場所に上手く誘導したのは訳がある。
Barならどこでも良かった訳だが。

お茶、と言っても、周囲の喫茶店は閉店している時間帯。
駅まで行けばチェーン店のコーヒーショップがあるが、そこまで行くことを考えると、
この店は研究所から歩いて来れる距離。
そして、Aの自宅は、このBarのすぐ近くにあることを既に知っている景光は、
言葉巧みにこの店に誘導した訳だ。

自身のことを知っているのか。
――つまり、スコッチであった人物だと知っているのか。
反応を見るため。

そして、”シェリー”についても然りだ。

降谷の話では、シェリーという言葉を口にしていたという彼女。
それが、自身たちが考えるあの人物である確証はない。

先日、
景光はさりげなく彼女のコートに盗聴器を忍ばせていた。

しかし、ここ数日そこから音を拾うも――、ほぼ”音声”は拾えなかった。

聞き取れた音は、PCのキーボードの音と、書類の音、
そして、時折聞こえるガラスが奏でるような高音だけ。

会話という会話は、所長か同僚と交わしている挨拶程度。

研究所内に仕掛けた訳ではないため、
音が全く拾えない時間帯もあった訳で。

つまり、有力な情報は何も得られていないのだ。