再会 ページ18
そして、翌日の金曜日。
夕方の米花デパート前の歩道は、いつものように多くの通行人で賑わっている。
そしてその中には、目の前を歩くAの様子をさりげなく伺っている景光の姿があった。
研究所のあのビルから、こちらに歩いてくるところを尾行していたのだ。
白っぽいコートに身を包んだスカート姿の彼女は、
やはり、景光が最初に見かけたフード姿の彼女とは大きく雰囲気が異なっていた。
そして――、
「…あっ…」
『…っ』
急に歩くスピードを速め、Aに近づいたかと思うと、
周囲の人間に押されたかのように装い、彼女にぶつかり、
それと同時に自身が持っていたカバンを落とした景光。
あからさまな行動ではあるが、
人通りの多い場所では偶然を装うのはそう難しいことではない。
「す、すみません…」
『いえ、こちらこそ――』
カバンを拾いながら、困った表情でAに謝罪する景光だが、
何かに気付いたような表情のAに、
つられるようにして小さく驚きの声を上げた。
「あ…、昨日の」
『…』
立ち止まったAは、
軽々と見下ろされるような身長差の景光から、少し戸惑ったように視線を逸らした。
「ぶつかってすみません。大丈夫でしたか?」
『…は、はい。大丈夫です』
「偶然、ですね。お仕事帰り、ですか?」
『はい』
柔らかい雰囲気をまとう景光につられてか、
Aは少しだけ困った様子だが、少し柔らかく表情を緩めて答えた。
「ちょうど良かった。お礼を言いたかったんです」
『…え?』
「この間、道を教えてくれて本当にありがとうございました。
あの日、打ち合わせの予定だったんですけど、
…あのまま迷っていたら遅刻してしまうところでした。」
『…』
「本当に、ありがとうございました」
頭を下げてお礼を言う景光は、あの日と同じスーツ姿で。
そのセリフからも、サラリーマン、といった様子だ。
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作者名:white12 | 作成日時:2020年1月27日 20時