301号室_4 ページ48
30分後。
301号室の窓の外から、
再び、外から拡声器越しのくぐもった声が聞こえる。
「…に告ぐ!」
小さな舌打ちを続けていた爆弾男は、
窓を小さく開けた。
「犯人に告ぐ!
支配人の冴島は、
今、ここに向かっているが、
少なくとも、後2時間はかかる…!
ここは完全に包囲されている!
人質を――」
「…うるさい!
この部屋吹っ飛ばすぞ…!
奴が、
冴島が来るまで、
こいつらは解放しねぇ!」
そうして、
またも乱暴に窓を閉めた。
(…包囲。
この男がロビーに現れてから…、
もう30分はとうに過ぎている。
おそらく、
既にSITも到着している…?)
ベッド脇のローテーブルに置かれた時計に目を向けながら、
時間を確認するA。
特殊事件捜査係、通称SIT。
ホテルは3F。
窓の外の正面には、それよりもかなり高いビル。
角度的に、狙撃は、やはり難しそうだ。
(支配人が到着するまでに2時間…。
男を制圧するなら…
窓か、ドアから催涙ガス弾を投げ込んで、
突入…ってところ、かしら…)
Aは、
ドア横に置かれた、
爆弾、と思われる物体に視線を移す。
そして、
再び椅子に乱暴に腰掛けた爆弾男に見えないよう、
険しい表情をしながら、
後ろ手に小さく指を動かしていた。
捕らえられた他の2人は、
口を開かないまま、
浅い息を吐きながら、
怯えた様子を見せている。
そして、
「あ、あの…」
Aが、
怯えた”様子”で、
爆弾男に声を掛けた。
「…は…?
…何だよ。
変な真似すんなよ?」
「あの、
ドアの所にある箱って…」
そうして、
Aは、ドアの方へ目を向ける。
「…爆弾、だ。
ここに入ってきた奴は、
吹っ飛んじまうって訳だ。
お前らも、変な真似したら…分かってんな?」
そう言って、
椅子に座ったまま、
リモコンをひらひらさせる男。
しかし、一瞬、
諦めたような、
悔しそうな顔をした。
その言葉を聞き、
人質の2人は、
ひゅ…っ、と息を飲み、カタカタと震えている。
Aも、同じように“怯えた”。
150人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:white12 | 作成日時:2019年7月25日 18時