いつの日か。(3)【安室透/降谷零】 (ページ31)

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戻るべき場所_4 ページ31

思考を巡らせながら、
険しい表情のまま、
ふと目に入ったベンチに腰掛ける。

ふぅ…と息を吐くと同時に、
肌寒い、冷たい風が、明るい色の髪を揺らした。

(もう、少しだ…)

息を吐けば、ふと、多くの大切な人の顔が浮かぶ。

警察学校時代を共に過ごした同期は、皆、

もう――

いない。

殉職は、警察にとっては名誉なこと。
萩原も、松田も。

そして、不慮の事故で命を失った、
伊達...。

しかし…

ヒロは、
スコッチは、

殺された。
奴に。
奴なら、止められたはずなのに。

警察学校のあいつらの笑った顔が、
淡く頭に浮かんだ。

そして、今日は…、
11月7日。

萩原と、松田の命日、だった。

手を合わせにいくことなど、出来ない。

降谷はただ、そっと、
目を伏せた。

(疲れているのか…)

感傷にひたりかけている自分に気づき、
ゆっくり息を吐きながら、我に返る。
それでも、まだ、ここを離れる気にはなれなかった。
やはり、疲れているのかも、しれない。

カサッ

静かな空間に、わずかに物音がした。
人の気配だ。

再び、
その目に鋭さを宿し、
ゆっくり、音が発せられた方へ顔を向けると、

1人の女性が、そこにいた。