古文書と埋蔵金のありか_2 ページ27
『古文書には、
武田菱のようなマーク。
そして、この信濃、
中尾山温泉のある茶臼山という土地。
埋蔵金は、武田信玄ゆかりのものであると考えられます』
「はい。でも、それがどうして?」
がっかりした様子の高島が、問いかける。
『自然石でできた地蔵は日本各地にありますが、
確か、甲府にあるものが有名ですよね。
そして、
こうした地蔵はほぼ江戸時代前期、
1600年後半〜1700年前半頃に作られたもののはずです。
風雨で荒れて自然の石のように見えていた可能性は、
極めて低い。
顔、そして、目元までその彫りがはっきり残っていたのに、
胴体だけが抉られることはまずありません。
そして、武田信玄が亡くなったのは――』
「確か、1573年…」
そう、口にしたのは歴史学者の加藤だ。
「…!」
『そう。
おかしいんですよ。
埋蔵金のありかを古文書に記すなら、
それを埋めた直後か、
埋めた本人が亡くなる前。
その記憶を持っている人物が生きている間であるはずです。
確実に、文書として記すために。
亡くなって、
100年近くも後に記されるのはおかしい』
「「た、確かに...」」
『そう考えると、これは…
江戸時代前期以降、
何かの目的で作られた偽物の文書...ということになるのではないでしょうか。
古文書の内容が、
自然石でできたあの地蔵のことを指していない可能性も払拭できませんが、
もしそうだとすれば、
何らかの理由で今はもうここにない地蔵ということになる。
そうなれば、埋蔵金を発掘出来る可能性は、
ますますゼロに近づきます。』
饒舌に話す安室の推理を、
がっかりしながら、
納得しながら、
聞いていた一同は、
大きなため息を漏らしたのだった。
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作者名:white12 | 作成日時:2019年7月25日 18時