夕日さす_4 ページ13
(…はぁ。
まだまだ、本調子じゃないわね…)
男を投げ飛ばした際に感じた、
肩、そして腹部の鈍い痛みと戦いながら、
Aは、
頭上の、元いた場所を眺めていた。
滑り落ちたのは5 mほど。
幸い、途中に足場となりうる場所に落ちたようで、
辛うじて枝に捕まったこともあり、
眼下に見える、その3倍以上はあるだろう落差を滑り落ちることは、
無かった。
足場はあるとはいえ、
ぬかるんだ地面。
それに、そうそう木が都合よく生えている訳でもなく、
簡単に登れそうに、ない。
(…下に降りる、にしても…
ちょっと、キツイかしら)
ちらりと、眼下に目をやるも、
高度はかなりある。
滑りながら、下の山道まで落ちるといっても、
それはそれで、危険だ。
「…はぁ。
助けを呼ぶって言ってもね…」
泥だらけになった手で、
ポケットのスマホに手をやるが、
助けを呼べる人物は、まずいない。
コール履歴は、
打ち合わせで使った、
旅館の支配人、高島の電話番号のみ。
( …高島さんに連絡する、ってのも、ねぇ…
それにしても、
山中。
女を狙うナイフを持った男。
...例の、犯人、かしら...
さっきの男、もしかして...)
連続殺人未遂事件の情報を全く知らなかった訳ではないにせよ、
ここで遭遇するとも思っていなかったAが、
ふと、思案していると、
頭上辺りが、
チカチカと光った。
(…？)
一筋の、光が、
頭上付近をうろうろと彷徨っている。
(…何？
…誰？
もしかして、さっきの…男？)
再び、襲いに来たのだろうか。
(やっぱり、何とか滑り降りるしか…)
と、Aが身を固くしていると、
『…だ、大丈夫ですか…!？』
頭上から降ってきたのは、
聞き慣れた声だった。
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作者名：white12
| 作成日時：2019年7月25日 18時
