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夕日さす_3 ページ12

その夜。


A――
早川 瑞希は、
夕月荘を出て茶臼山の山中に、いた。


地蔵のあった場所とは反対側の場所。
周囲は茂みに囲まれ、

その下には、
かなりの落差を経て山道が見える。

安全とは言えない場所。

辺りには明かりはほとんど、ない。


その場所で、
ポツン、と1人。
頭上を眺めていた。


(…。)



ふと、脳裏に浮かぶのは、
親友の、顔だった。



もう、
顔を合わせることは出来ない、

――いつの日か、そう、出来る日が来るのだろうか。




午後からすっかり晴れた雨上がりの空は、
澄みわたり、

夏の星座達が彩り、
登り始めた半月との共演を果たしていた。


周囲に明かりが無いこの場所では、
それらが一段と輝いて見えていた。





ぼんやりと頭上を眺めていたその時――



ザッ



背後に気配を感じ、

目を鋭くさせ瞬時に振り返るA。


目の前には、
光る、何か。


(…ナイフ。)

そして、
それを手にしているのは、
黒いフードを被った長身の男。

ナイフを手に向かってくる男に、
焦点を合わせ、
とっさに間合いに入るA。

そして、
その胸ぐらを掴み――

投げ飛ばした。



「うっ…」

「…っ」

地面に叩きつけられた男のうめき声。
…だけではなくAの口からも、小さな声が漏れ、
その身体がよろめく。


男が瞬時に立ち上がり、
その場から逃げ出すと同時に、
Aはバランスを崩し、


「…!」


そのまま、
下の山道へと滑り落ちた。

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作者名:white12 | 作成日時:2019年7月25日 18時

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