Rain (3)【名探偵コナン】

良い男の定義 ページ7

「いらっしゃいませ！...えっ...」

「こんにちは。」

「あ...、えっと、お好きな席へどうぞ」


年が明け、三が日を過ぎた頃。
Café Rainに来店した人物に、
由紀は戸惑う様子を見せ、普段の元気な声より明らかにお淑やかなトーンで席へ誘導した。




『あ、…またいらして下さったんですね。
ありがとうございます。』

「本当はクリスマス用のスコーンを食べに来たかったんですが。
…すみません、お店に来られなくて。」

『いえ、そんな。
お店の方もあるでしょうし、気にしないでください。』

Aが、"気にしていないので"というようにニコリと微笑んだ相手は、
喫茶店ポアロの店員、安室だ。

今日はカウンターの端の席に腰を下ろし、
向かい合うような状況で、Aに申し訳なさそうな笑みを向けている。

クリスマスの少し前、Aが初めてポアロを訪れた際、
ちらりと見られたクリスマススコーンのデザインの話から、
ぜひ店に来てくださいね、と話したAの言葉を律儀に覚えていたようで。

どこか女性慣れしてそうな印象だが、
紳士的で、律儀な安室に、Aは口元を緩めた。


「ブレンドコーヒーをいただけますか？
それと、このスコーンもお願いします。」

『ありがとうございます。
少々お待ちくださいね。』


カウンター席の安室は、
直接Aヘと声をかけ、注文をお願いしたのだが、
1組のテーブル席の客の対応を終え、
チラチラと安室の様子を伺い、
注文を聞くために安室に近づこうとしていた由紀は、
あからさまに残念そうな顔をした。

「あ、それと――」

『他にも何か？』

「あけまして、おめでとうございます。」

『…あ、…おめでとうございます』

安室が爽やかな笑顔で新年の挨拶を口にすると、
Aもまた、ふわりと微笑み、挨拶を返した。
接客業としては、自身の方からするべきだったのに…、
と小さく反省するA。

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