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クレーム ページ41

「信じてねぇみたいな…、信用したくねぇみたいな言い方だっただろうが。
だから、確かめれば良いんじゃねぇのかって、…さっき言ったばっかだろ」

『…え…』

「…んだよ…何、言い切ってんだよ」


俯いて言葉を零していたAが、
近づいてきた声に顔を上げると、
目の前には、
気まずそうに、恥ずかしそうに目を細めた、
見たこともない顔をした松田がいた。


『あ…、えっと、私――』


そして、変なことを言ってしまったと、
謝罪の言葉を述べようとして、目を見開いた。

先ほどは頭上にあったはずが、
急に至近距離に近づいた、
いや、もはや自身の顔との距離がなくなった松田の顔に、
わずかに感じる温度に、パチパチと瞬きを繰り返す。

そして、

『…っ…!』

その顔が、温度が、離れていく直前、
唇に与えられた感覚に、ピクリと肩を揺らした。
前に感じた、ペロリと舐められるような感覚に。


『…あ…、な...何…す――』

「来てなかったみてぇだからな」

『え…』

軽く触れる程度のキスに、
その後の柔らかい感覚に、
とっさに、右手で口元を覆い戸惑うA。

そして、
先ほどまで恥ずかしそうな顔を浮かべていた松田は、
Aの戸惑う様子に、ニヤリ、と不敵に笑った。


「クレーム。嫌だったなら入れとけって言っただろ」

『あ…』

“嫌だったんなら警視庁にクレーム入れとけ”
確かにそう言われていた。
あの日。侑斗に無理やりキスをされた日。
擦れて血が滲んだ唇を、松田にペロリと舐められた、あの日のことだ。

『そ、そう…ですけど…』


Aの右手首をやんわりと掴み、
その口元を、抗議のような言葉を零すその口を露わにさせる松田。

そして、″ん?″と、
いじわるそうに首を傾げた彼から離れるように、
Aが少しずつ後ずさりするも、
カウンターテーブルの端に当たった背は、それ以上は進まない。

その状況は、
侑斗に迫られた時と同じようなもので。
しかし、Aの心境は180度違っているわけで。


強引に掴まれているわけではない。
逃げようと思えば逃げられる程度の力。

そして、手首を掴まれる、というあの夜と同じ体勢の2人だったが、
その状況はやはり180度異なっていた。


Aの困ったような悩ましげな表情は、
目の前の男を求めているようにも、見えた。

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設定タグ:名探偵コナン , 松田陣平 , 警察学校組   
作品ジャンル:アニメ
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white12(プロフ) - なゆさん» 嬉しいコメントありがとうございます。申し訳ありませんが、あとがきに書いたように続編の執筆予定はありません。各キャラ目線のスピンオフ...楽しそうですね。確約出来ないのが心苦しいですが、執筆出来た際にはまたお読みいただけたら嬉しいです! (2019年11月23日 15時) (レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
なゆ(プロフ) - 完結おめでとうございます!!初めてコメントします。いきなりですが、Rainの続編とか各キャラ目線のお話とか待ってます。 (2019年11月22日 23時) (レス) id: 69230dd273 (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - なーこさん» 最後までお読み頂き、嬉しいコメントまで頂き本当にありがとうございます。由紀ちゃんがお好きですか☆作者の中では"ちゃん"呼びの、同じく愛着のある人物です。嬉しいコメントを頂けて、涙腺緩みつつあります。宜しければ今後ともお付き合い頂けたら嬉しいです。 (2019年11月21日 20時) (レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
なーこ(プロフ) - 完結おめでとうございます´`*カフェラテのような苦味と甘さが詰まってる内容で凄く面白かったです。個人的には由紀さんの人柄がとにかく好きで...夢主ではないオリキャラに愛着が湧いたのは初めてでした(笑)これからもwhite12さんの小説を楽しみにしてます*。 (2019年11月21日 18時) (レス) id: e08e419bfb (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - 捺美さん» とても嬉しいコメントありがとうございます。最終話の更新が遅くなり、申し訳ありませんでした。お読み頂けただけでも有難いのに、嬉しいコメントまで頂けて本当にありがとうございます。本作はこれで終了となりますが、宜しければまた次回作でお会いできればと思います (2019年11月21日 17時) (レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:white12 | 作成日時:2019年11月18日 21時

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