確かめてみれば ページ36
「…大丈夫か？」
心配そうに昨夜と同じセリフを口にする松田にAは、
緩みかける涙腺に気づかないふりをして、”もう大丈夫です”、と答えた。
そして、
『昨日は、ありがとうございました…』
と、伝えないと、と迷っていたお礼を述べ、頭を下げた。
「いや、怪我がなくて良かった。
…にしても、今日くらい店休めば良いだろうが…。」
『いえ…。本当に平気、ですから』
首を絞められたことなど、当然生まれて初めてだ。
恐怖心が消えた訳ではないが、
自宅に一人でいる方がもっと不安だった。
昨夜、事情聴取を終えて帰宅した後は、正直ほとんど眠れなかったのだ。
接客をしている間は恐怖心は消えていたものの、
こうして静かな空間になると、
そして、大丈夫かと問われると、大丈夫ではない事にはっきりと気付く訳で。
貼り付けたような笑顔で強がるAに、
松田は目を細めた。
「…悪かったな。もう少し早くアンタを見つけてれば…」
『いえ…。あの、何で分かったんですか…？』
再び襲ってくる恐怖心を感じそうになったのだが、
あくまで平然として問いかけるAに、
松田は入口に立ったまま、
罰が悪そうに、頬を掻く仕草を見せた。
「あー、たまたま…見かけた…、だけだ。
アンタとあの男が一緒にいるところをな。」
『…じゃあ、侑斗が松田さんに度々邪魔されたっていうのは…』
「邪魔？」
『何度か閉店後に店に入ってこようとしたって、言ってました。
でも、松田さんに邪魔されたって…』
「あ…、まぁ、それもたまたまっつーか…。
この辺りでちょくちょく捜査があってな。ほら、この先の商店街でも事件…あっただろ。
その帰りにあの男を見かけて、声かけたことは…確かにあったな。」
昨夜、店の方へ足を進めていると、
離れた距離から、
遠目に、侑斗に腕を引っ張られるようにして路地の方へと向かうAを目にし、慌てて周囲を探した松田。
昨夜のことは、偶然見かけたと言っても嘘ではないものの、
この1ヶ月ほど、警戒するようにして、度々店の周囲に現れていた松田は、
気まずそうに視線をそらした。
Aは、それ以上は追求することはしなかったが、
複雑な表情を浮かべていた。
あの時、”葉山 侑斗”と、呼んで彼に手錠をかけた松田。
Aは、話の中で”侑斗”としか呼んだことはないはずだ。
(…調べてた、ってこと…よね…)
そして、
ジワリと体の奥から何かが湧き上がってくるのを感じた。
と同時に、緩み始める涙腺。
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white12(プロフ) - なゆさん» 嬉しいコメントありがとうございます。申し訳ありませんが、あとがきに書いたように続編の執筆予定はありません。各キャラ目線のスピンオフ...楽しそうですね。確約出来ないのが心苦しいですが、執筆出来た際にはまたお読みいただけたら嬉しいです！ (2019年11月23日 15時) (
レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
なゆ(プロフ) - 完結おめでとうございます！！初めてコメントします。いきなりですが、Rainの続編とか各キャラ目線のお話とか待ってます。 (2019年11月22日 23時) (レス) id: 69230dd273 (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - なーこさん» 最後までお読み頂き、嬉しいコメントまで頂き本当にありがとうございます。由紀ちゃんがお好きですか☆作者の中では"ちゃん"呼びの、同じく愛着のある人物です。嬉しいコメントを頂けて、涙腺緩みつつあります。宜しければ今後ともお付き合い頂けたら嬉しいです。 (2019年11月21日 20時) (レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
なーこ(プロフ) - 完結おめでとうございます´`*カフェラテのような苦味と甘さが詰まってる内容で凄く面白かったです。個人的には由紀さんの人柄がとにかく好きで...夢主ではないオリキャラに愛着が湧いたのは初めてでした(笑)これからもwhite12さんの小説を楽しみにしてます*。 (2019年11月21日 18時) (レス) id: e08e419bfb (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - 捺美さん» とても嬉しいコメントありがとうございます。最終話の更新が遅くなり、申し訳ありませんでした。お読み頂けただけでも有難いのに、嬉しいコメントまで頂けて本当にありがとうございます。本作はこれで終了となりますが、宜しければまた次回作でお会いできればと思います (2019年11月21日 17時) (レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：white12
| 作成日時：2019年11月18日 21時
