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Rain_4 ページ46

「…別に、雨の日にしか来ねぇって訳じゃねぇだろ」

『…え…』

唇を離した松田は、
息を乱して蕩けた目をするAに、
不満そうに零した。


「雨の日にしか会えねぇ、みてぇに言うなよ」

『あ…』

ピン、と人差し指でAのおでこを軽く小突くと、
あからさまに不満げな表情を浮かべる松田。

雨が降る日はこの店に松田が現れるような気がして楽しみだと、
嬉しいと、そういう意味で言ったのだが、
確かに、そう勘違いされてもおかしくない言葉だったと、Aは困った顔をした。


「それと――」

『え…』


一旦外されていたその手を再び頬に当てられたAは、
未だ目を蕩けさせたまま、松田を見つめた。


「俺はAの過去を否定したくはねぇから、
忘れさせてやる、なんて言いたくねぇし、言えねぇけどな。
…まぁ、こうやって、上書きしていけばいいんじゃねぇのか…って、思ってる」

『…』

じっと目を見つめてそう話す松田に、
どんどん上昇する体温に、
Aはたまらず視線を逸らした。


( …あ…)


侑斗のことだろうか。
キスを迫られ、それでも、
深くなる口付けに抵抗できなかった自身の体。

“身体が覚えている”

侑斗に言われた言葉を、
確か、松田にも話してしまったはずだ。
もう好きじゃないのに、忘れたいのに、と葛藤しているような様子も、
見せてしまったはず。

A自身、好きだということを伝えてはいて、
松田からも、ポツリとその言葉をもらったはずなのだが、
こんな関係になったとはいえ、
それでもやはり、侑斗のことを気にしていたのだろうか。

その上、松田には一真とのことも知られている。
...傷つけてしまっていたのだろうか。


こうやって、口数は多くはないけれど言葉にしてくれる松田。
優しい目で、大事そうに見つめてくれる松田。

目の前の男の、
裏表のない真っ直ぐで、
不器用で、誠実で、優しいところに、惹かれたのだ。



もう一度視線を戻したAの目に映ったのは、
どこか切なそうな松田の瞳。

言いようのない感情に襲われたAは、


『…そう、ですね』


と、困ったように微笑むと、
自身を見つめる目の前の男の唇に、
愛おしそうに、今度は自分からキスを落としたのだった。



(――END)

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設定タグ:名探偵コナン , 松田陣平 , 警察学校組   
作品ジャンル:アニメ
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white12(プロフ) - なゆさん» 嬉しいコメントありがとうございます。申し訳ありませんが、あとがきに書いたように続編の執筆予定はありません。各キャラ目線のスピンオフ...楽しそうですね。確約出来ないのが心苦しいですが、執筆出来た際にはまたお読みいただけたら嬉しいです! (2019年11月23日 15時) (レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
なゆ(プロフ) - 完結おめでとうございます!!初めてコメントします。いきなりですが、Rainの続編とか各キャラ目線のお話とか待ってます。 (2019年11月22日 23時) (レス) id: 69230dd273 (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - なーこさん» 最後までお読み頂き、嬉しいコメントまで頂き本当にありがとうございます。由紀ちゃんがお好きですか☆作者の中では"ちゃん"呼びの、同じく愛着のある人物です。嬉しいコメントを頂けて、涙腺緩みつつあります。宜しければ今後ともお付き合い頂けたら嬉しいです。 (2019年11月21日 20時) (レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
なーこ(プロフ) - 完結おめでとうございます´`*カフェラテのような苦味と甘さが詰まってる内容で凄く面白かったです。個人的には由紀さんの人柄がとにかく好きで...夢主ではないオリキャラに愛着が湧いたのは初めてでした(笑)これからもwhite12さんの小説を楽しみにしてます*。 (2019年11月21日 18時) (レス) id: e08e419bfb (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - 捺美さん» とても嬉しいコメントありがとうございます。最終話の更新が遅くなり、申し訳ありませんでした。お読み頂けただけでも有難いのに、嬉しいコメントまで頂けて本当にありがとうございます。本作はこれで終了となりますが、宜しければまた次回作でお会いできればと思います (2019年11月21日 17時) (レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:white12 | 作成日時:2019年11月18日 21時

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