Marble −茜色の言葉− 【名探偵コナン】

もう一つの顔_4 ページ8

しばらくして、
食事を終え、会計をしようと席を立ち上がった2人は、
キッチンのカウンター内で何やら作業をしている店員に一瞬目を留めた。


金髪。
長身。
褐色の肌。

遠目からでも目をひくそのスタイルの良さに、
世の多くの女性が振り返りそうな整った顔立ち。


見間違いではないと確信はしていた2人。

デスクに直接話をしに行ったことがあるAだけではなく、
書類を出しに来た彼と一度顔を合わせたことのあるサヤカも、
その姿は良く覚えていた訳で。




「ありがとうございました！また、お越しくださいね」


そして、
梓の元気な声に見送られ、店を出ると、
しばらくしてサヤカはAに再びこっそり話しかけた。


「…あの人ってやっぱり…」

『…分からないけど。
捜査だとかその他重要な任務とか、プライベートに関わることとか。
きっと理由は色々あるんじゃない？』

「そう...ですよね。
...実はSNSで、
あの店にめちゃくちゃイケメンな店員さんがいるっていうのも話題になってたんですよ」

『へぇ…？そうなの？』

「あの人のこと…みたいですね。…めちゃくちゃカッコいいですもんね」


どこか気恥ずかしそうな雰囲気のサヤカ。
Aは、サヤカが先ほど彼を見て固まっていたのは、
自分が考えていた理由とは少し違うのかもしれないと、苦笑いをした。


『とりあえず、内部のことを話すのは厳禁だからね。
配属になるときに、しっかり教育されたでしょ』

「もちろん。分かってます」


現場での捜査、ましてや潜入捜査に関わることなどあり得ない事務官だが、
そうした現場にいる人間と関わることがある立場だ。
現に、降谷のことを認識している訳で。

警察庁に勤めている限り、守秘義務があるのは当然だ。
それはどの職場でもそれは同じことだが、
公安警察の人間と関わるのだから、人一倍それを理解しておく必要がある。

サヤカに念を押すように、
Aは軽く人差し指を立ててうなずいた。
まだ不慣れなところもあるサヤカは少々混乱したようだが、
それはちゃんと理解しているようで。



詳しい事情は知らないにせよ、
警察庁でそれなりの立場の人物。

公安警察のあのオフィスで、
目の下にクマを作り分厚い書類とにらめっこをしている彼とは先日会ったばかりだ。
その彼のもう1つの顔を思いがけず知ってしまったAは、
サヤカと並んで駅に向かいながら、どこか落ち着かない様子で小さなため息を溢したのだった。

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