Marble −茜色の言葉− 【名探偵コナン】

違和感の正体_2 ページ41

「公安部の人間…。刑事だったということか？」

「…確か、2年前に辞めたはずです」

「2年前…」

「追っている案件、…そもそも班が違いましたので、
直接関わることは少なかったのですが」

「辞めた人間が、今は警察庁の事務官…か」

「警察庁…、公安警察への栄転の話があるとか噂を聞いていた時期でした」

「公安警察に…」


風見の話に、
降谷は何かを思い出すように宙を見つめた。


「…そういえば――」

「何かご存知だったんですか？」

「…いや、ただ、諸事情で辞令を辞退した人間がいた記憶がある。
当時僕は潜入捜査に割く時間が圧倒的に多かったからな。
…あまり関わってはいなかった話だが」

「詳しい事情は、自分は分かりません。
ただ、その頃。
公安部の人間が1人殉職しまして。
...彼女と同じ班だったので…何か関係があるのかもしれませんが
――確かに、降谷さんはあの組織で行動している毎日だったと思いますので、
詳細はお耳に入っていなかったかもしれません。」

「…」


降谷の表情が歪んだことで、
“思い出させてしまった”のだと瞬時に気づいた風見は、
少し口を閉ざした。


「…自分はその少し後に、
彼女が警視庁を辞めたという話を聞いただけです。
公安警察ではないにしても警察庁配属になっていたとは、
確か昨年…、このオフィスで顔を合わせるまでは知りませんでしたが」

「…そうか」

「徹夜明けの降谷さんに物申せる事務官だと、
…彼女が辞めた後に公安部にきた人間の間では、
何と言うか、もっぱら噂になってるみたいですけどね」


今、警察庁に出入りしている公安部の人間はそう数が多い訳では無い。
風見の他に、ちょうど2年前に配属になった刑事が2名ほど、
そして、公安部にきて1年に満たない刑事が教育を兼ねた形で来ているくらいだ。

Aのことを知っているとはいえ、
風見とて近しい間柄だったわけではない。
時折顔を合わせた際の微妙な雰囲気が、
それを良く物語っていた。

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