重要なスキルの一つ_3 ページ28
特に聞かれて困る話をするつもりなどない。
ただ、エレベーターの前で立ち止まってあれこれと話すようなことではない。
どちらからともなく促されるようにして、
2人は裏口に通じる通路の隅に移動した。
「2年前。こちらに配属になるはずだった人間が辞退したという話は、覚えている。
普通はあり得ないことだからな。
...その人間が、警察庁で事務官になっていたとは知らなかったが」
『…調べたのか、どなたかに聞いたのかは知りませんけど。
立場のある方だと思っていたんですが、…ずいぶんと暇なんですね』
「…」
『昨日に引き続き、待ち伏せのようなことをされるとは思いませんでした』
すっと視線を外したAに、降谷がピクリと眉を動かして苦笑いした。
警察庁では、"降谷零"な訳だ。
ここでは、
いつものポーカーフェイスは、意外と簡単に崩れるらしい。
「...悪いがたまたまだ。
エレベーターから偶然君が降りてきただけだ」
『だとしても、こんな風に私と話している時間があるほど、
やはりお暇なのかと思いまして』
「…ずいぶんと嫌味が上手なようだな」
『それはどうも』
「褒めてるつもりはないんだが」
掴めないのはどちらなのか。
どうにもやりにくそうに、降谷が探るような視線をAに向けた。
『…取調べでは力を発揮する重要なスキルの一つだと思いますので。
事務官としては、…先日のように、貴方のような立場のある人間を対応する際に、
重要になることもありますし』
確かに。
普段ならばどうにも掴めない面倒な会話だが、
取調べでは有効に働くことは大いにある。
それは、いち警察官、なにより刑事であるなら誰しも分かっていることだ。
Aの言葉は、
"公安部にいた"という事実を裏付けるつもりは毛頭ないだろうが、
降谷は、どこか合点がいったようで。
そして、
確かに彼女の言う通り、
事務官としても、立場が上の人間とやりとりをする際は、時には有効なスキルだろう。
あくまで、冷静に、
相手の神経を逆撫でして話をややこしくしない程度に、
というのは必須なわけだが。
修理費用について追求された際もこんなやりとりだった気がするな、と、
降谷は小さく歪めていた口元を緩ませた。
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white12(プロフ) - 若ちゃんさん» 何かとお目汚しが多いかと思いますが、今後ともお付き合い頂けましたら幸いです。 (2020年11月6日 10時) (
レス) id: 654daa9564 (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - 若ちゃんさん» 勉強だなんて大変恐れ多いお言葉と応援をありがとうございます。遭遇率は...そうですね (苦笑)同じ職場なので偶然顔を合わせることはこれまでもあったはずですが、外での遭遇は、"安室"として彼がある程度自由に行動し始めたからという感じですね。 (2020年11月6日 10時) (レス) id: 654daa9564 (このIDを非表示/違反報告)
若ちゃん - もの凄い降谷さんとの遭遇率…！でもやっぱりそれが運命感あっていいです。実は私も小説を書いていて、（占ツクじゃないですけど）恐縮ながら参考にさせていただいてます！自嘲めいた笑み、が今の自分のお気に入りですかね！ｗこれからも勉強&応援させてもらいます！ (2020年11月4日 17時) (レス) id: aabd79707b (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - 若ちゃんさん» めちゃくちゃ嬉しいコメント、ありがとうございます...！嬉し過ぎて涙が出そうになっております。拙い表現が多い作者の作品ですが、そのように言っていただけて本当に嬉しいです。どうぞ最後までお付き合い頂けますと幸いです。 (2020年10月29日 18時) (レス) id: 654daa9564 (このIDを非表示/違反報告)
若ちゃん - 新作をありがとうございます！ほんっとにwhite12さんの作品が大好きで、とても新作を楽しみにしていました！情景描写が本当に素晴らしくて、こちらも一緒にドキドキできて嬉しいです。応援してます！頑張って下さい！ (2020年10月28日 21時) (レス) id: aabd79707b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：white12
| 作成日時：2020年10月26日 19時
