月夜の晩に_5 ページ49
(…思ったより、年齢が高いのかしら…)
「予告通り、ブラック・レディは頂いて行きますね。お嬢さん」
まだ少し息を乱しながら、
怪盗お決まりのセリフを口にし、
腰のあたりに手を当てる怪盗キッド。
その背から現れたのはハンググライダー。
それは、Aが目にしたこれまでの捜査資料に書かれていた、怪盗キッドの主な逃亡手段だ。
『…させるわけないでしょ』
「…！」
地面を蹴るようにして怪盗キッドの方へ走り出し、
一気に距離を詰めようとするAに一瞬怯むも、
瞬時に走り出し、屋上からそのまま飛び降りようと、いや、その背のハンググライダーで飛ぼうとするキッド。
しかし、Aの方が一瞬早く、
ぐっと腕を掴まれ、その足が一瞬止まる。
『…盗んだもの、早く出しなさい。
さっさと貴方を捕まえて、こっちはやらなきゃいけないことがあるのよ』
八つ当たりのようなセリフとともに、目の前の人物を睨み上げるA。
昼間に一ノ瀬に話したように、
正直なところ、この時間にも二課として進めたい捜査は山積みなのだ。
そのまま後ろ向きに投げ飛ばそうと、力を込めるAだったが――
『…っ！』
目の前の人物が銃のようなものを取り出したかと思うと、
足元を何かがかすめ、一瞬手を緩めてしまう。
『…ま、待ちなさい！』
そしてその隙をついたキッドは、
そのまま屋上から飛び降りた。
クリスマスイブ。
クリスマスムード全開のキラキラ東都の街並みを見下ろすように、
空を飛び、逃げていくキッドを唇を噛み締め、悔しそうに見つめるA。
足元に刺さっていたのは、
トランプのカードだった。
(…世紀の大泥棒、ね…
トランプカードの銃とは、ずいぶんキザなものね。
でも…、初老の男…だったわよね…)
格好といい、目の前のトランプのカードといい、
キザな怪盗には違いないものの、
掴んだ腕の感触と、目の前で見た怪盗キッドの雰囲気に、
8年前までの捜査資料から推測される姿とはやや異なる印象を抱き、
訝しげな顔をするA。
その眼下には、美術館入り口から、頭上を飛ぶキッドの姿を目にし、
悔しそうに叫びながら、追いかける中森警部たちの姿があった。
それは、
黒羽快斗が、
8年前まで姿を現していた初代怪盗キッドの正体、
その目的、そして、その後を継ぐようにして、
寺井黄之助がその姿に扮していたことを知る3年前のことだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 209人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：white12
| 作成日時：2019年11月17日 12時
