緊迫の3分_9 ページ41
そして、
犯人が3人ともパトカーへと連行されるのを確認すると、
Aは一ノ瀬の車の助手席に乗り込んだ。
「とりあえず、警察病院に向かいますから」
『…別に、これくらい――』
「手首真っ赤に染めといて、何言ってんですか!
そもそも何でそんなとこ怪我してんですか…
犯人に撃たれたんですか…?」
エンジンをかけながら、
眉をひそめてAの手首を心配そうに見つめる一ノ瀬。
『違うわよ。自分でやったの』
「…は?」
『拘束されたままじゃ、犯人捕まえられないでしょ』
「…はぁ…。
まぁ、詳しいことは捜査一課に色々聞かれると思いますけど、
…でも、無事で良かったです…」
平然とした表情のAに、
一ノ瀬は顔を歪めるも、そのまま車を発進させた。
助手席に座るAは、
突如目の前に現れた降谷のことを考えていた。
1年以上前、
萩原が殉職する前。
降谷が、爆発物処理班のWエースとなる2人から爆弾処理技術の指南を受けていたことなど知る由もないAは、文字通り、助けてもらったことに小さく感謝すると共に、
彼が来なければどうなっていたか、ブルッと背筋を震わせたのだった。
そして――
『…あ』
「どうかしましたか?」
『…ううん。何でもないわ』
ポツリ、と思い出したように口を開いた Aは、
ふと、降谷に渡した、いや、奪われたナイフを思い出した。
ナイフといっても、ツールセットになっている代物だ。
Aの愛用の道具、である。
(…あーあ。あれ、使いやすかったのにな。)
捜査のため、もう一度現場に足を運ぶことは確実。
一応、その時に探してみるか、と考えながら、
収束した立てこもり事件に安堵し、
急激に睡魔に襲われ、ウトウトし始めるA。
ほんのりと白く曇る助手席の窓の外には、
12月らしい、キラキラとしたイルミネーション。
まだ2週間ほど先とはいえ、
街はすっかりクリスマスモードだ。
こうして、とても長く、緊迫した1日がようやく終わったことを、
誰1人犠牲者を出すことなく終わったことに安堵するAは、
心地よいエンジン音に後押しされるように、
すうっと意識を手放した。
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作者名:white12 | 作成日時:2019年11月17日 12時