捜査二課の女刑事 ページ27
それから20分が過ぎた。
あれから、外から声が聞こえることはない。
店ごと吹き飛ばす、
という犯人の言葉通り、下手に刺激しないようにということだろう。
Aは、トイレに行きたいと訴えた際、一旦犯人の女に外されたものの、
再び両手にガムテープを巻かれ、再び床に座らされていた。
そして、
椅子の陰に隠れるようにして、
後ろ手に、巻かれたガムテープをひたすらヒールの踵に擦り付けている。
先ほどのように、その手を止めることなく、
小さく動かし続けていた。
(…このままじゃ、埒があかない…)
裏口も全てシャッターが閉まっている。
催涙ガスを投げ入れたとして、
犯人が銃を発砲すれば、人質に危険が及ぶ。
あれから、拡声器越しの中森警部の声は聞こえない。
今、外の状況はどうなっているのだろうか。
現実的に、
犯人の要求をそのまま飲める訳じゃない。そもそも不可能だ。
このまま時間が過ぎれば、
先ほど頬を撃たれた中年男性のように、
確実に、人質への危険が積み重なるだけ。
そして――
カウンターの方でもたれ掛かるように立っている、
最初に発砲した大柄の男を見据えるようにして、
すっと立ち上がった。
「…おい、女。さっきから――」
リーダーの男がギロリとAを睨みつけ、
大柄な男が銃を構えながら近づいてくる。
目の前で銃口を突きつけられると、
すっと、その銃口を見据え、口を開くA。
『警視庁捜査二課の春宮です』
「…は？」
そして、ジャケットのポケットに手を入れると、
警察手帳を取り出した。
既に、両手首のガムテープは切れていた。
「…お前…、いつの間に」
カチャリと、
わざと音を立てるようにして銃口を突きつけてくる大柄な男を見上げるようにして、
Aは警察手帳を開く、男に見せつけた。
『…交渉するつもりはないわ。
でも、伝えておきたいことがある』
「…」
指示を仰ぐように、リーダーの男に視線を向ける目の前の犯人。
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作者名：white12
| 作成日時：2019年11月17日 12時
