オレンジ色の資料室 ページ1
1ヶ月後。
日も暮れ始めた頃、
Aは、うっすらオレンジ色に染まる警視庁の資料室で、
過去の捜査資料をひたすら読み漁っていた。
『あの秘書、過去に窃盗をやってるのね…。
…金の流れから色々と疑わしいけど、
2年前のD社の横領疑惑は結局起訴には持ち込めてないし…
詳細は裁判所で確認した方が良さそうね』
ブツブツと呟きながら、
デスクに積み上げたファイルに目を通していくA。
Aが資料室に現れる5分ほど前。
ある捜査資料を確認するため、
この場所には景光の姿があった。
もちろん、Aと顔を合わせることは無かったのだが。
『半年前の振り込め詐欺、やっぱり手口が似てる…。
ネットバンクの口座、もう一度洗い直した方が良さそう…』
手帳にメモを取りながら、
15分ほど捜査資料を真剣に読み漁った後、
ふっと瞼に重さを感じるA。
それもそのはず。
この3週間、詐欺グループとの関与が疑わしい証券会社の社長とその秘書、
そして、会社が主催するセミナーを張り込み続け、
さらには、その金の流れを追うため、関連するネットバンクの口座の情報を調べ続けているのだ。
正当な捜査としての、”ハッキング”、だ。
それは、Aが警察学校時代から続けてきた勉強の賜物と言える技術だ。
あの食堂で、
降谷たちと出会ったあの場所で、
ノートPCを開き、
サイバー関連犯罪のシステムについて、プログラミング言語について、
コツコツと勉強を続けていたAは、
それが自身の得意分野であると感じていた。
何はともあれ、
今のAは、ろくに睡眠時間を確保できていない状況だ。
思考がぼんやりし始め、
手元の手帳をジャケットの内ポケットにしまうA。
刑事としての本能か。
刑事の命とも言える手帳を、そう簡単に人に見せるわけにはいかない。
しかし、やはりその重たい瞼には勝てそうになく、
もうほとんど開かない目のまま、
手探りでポケットからスマホを取り出し何やら操作をしたかと思うと、
そのまま、ガタン、と机につっぷすように、Aは倒れこんだ。
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作者名:white12 | 作成日時:2019年11月17日 12時