伊達刑事_2 ページ43
『あぁ、ちょっと事件でね。かすり傷よ』
ふっと笑みを浮かべるAだが、
自身が撃ったとは言え、銃弾が掠めた右手首の傷はまだ鈍い痛みが残っていた。
「よく見りゃ頬にも傷があんじゃねぇか…ずいぶん荒っぽいことしてんな?
もしかして、この間の立てこもり事件のときの傷か?」
『…知ってたの。情報が早いのね』
「お前が取り押さえたって、…内部の爆弾も全部解体したって、
結構有名な話になってるぞ?」
伊達は、芸能人の噂話のような、Aの武勇伝のようにも聞こえるセリフを吐いているが、
その目は心底心配そうで、
痛々しそうなその手首の包帯を見つめている。
「大丈夫か?春宮」
『ずいぶん心配性ね?
刑事なんだから、このくらいの怪我でいちいち騒いでてどうするのよ』
もうすっかり塞がっているが、
今度は、
ナイフが掠め、うっすら赤みが残るAの頬に心配そうに目を向ける伊達に、
Aは、負けず嫌いのようなセリフを吐いた。
『それより、現場は三課が調べてくれてるのよね。
盗まれたものは――』
伊達とAが会話を交わしていると、
「春宮さん!すみません、遅くなりました。
…ずいぶん派手にやられてますね…」
散乱した部屋の状況に眉をひそめながら、
一ノ瀬が現場に現れた。
『一ノ瀬。
どうやら、昨日、息子を名乗る人物から電話が掛かってきてたみたい。
被害者が所有する金銭について確認するような。』
「先週、杯戸町の男性宅にかかってきた電話と似た内容ですね…」
『そうね。
あ、伊達。通話記録はもう調べてある?』
一ノ瀬と言葉を交わしつつ、
ふと、伊達の方を見上げるA。
小柄ではないが、170 cmほどの身長の一ノ瀬は、
10 cm以上高い位置にある目の前の人物の顔を見据え、
少し戸惑う表情を見せた。
209人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:white12 | 作成日時:2019年11月17日 12時