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盛大なため息 ページ45

翌日の捜査一課。

デスクで捜査資料とにらめっこをする松田は、
盛大なため息をついた。

「…はぁぁ…何やってんだ…俺。」

思考の隅には、Aの顔。

無意識に、
いや、衝動的に、というべきか、
赤くなったAの唇に舌を這わせてしまった。

傷を癒すような、本能的な行動。
“治したいと思った”。
そういうつもりだったのも確かなのだが。

キスした訳じゃないと口にしたが、
キスとどう違うのか説明できる自信もなかった。


侑斗という元カレのことを、まだ好きだなんてありえない、と言いながら、
身体が覚えているだとかなんだとか、
抵抗できなかったことで悔し涙を溢れさせているAに、
松田は、よく分からない苛立ちを感じたのだ。

接客業を営む彼女がいつも笑顔であることは頷ける。
そしてそのAは、所謂、美人の類で、
整った容姿をしている。
それゆえ、好意を抱く人物も出てくるだろうことも、頷ける。


夢を実現させたとも言えるあの店を大事にしている姿は、
良い女の部類に入るのかもしれない。

昨日、松田がタバコを吸い始めたことで、
それまで背を向け口を閉ざしていた彼女は、
急に松田を店から押し出すようにして近づいてきた。
店のことになると、何やら人が変わる印象で。

人の心情を察するのがあまり得意ではない松田も、
Aが店を大事にしていることは良く分かる。

出会った当初は容疑者として疑っていたが、
その後Aと接していて、彼女自身に悪い印象を抱いたことは、ないのだ。


その一方で、くだらない男とばかり付き合っているような、
そういう男とばかり関わっているような、
そんなAに、言いようのない苛立ちを覚えた。

面倒臭い男と関わって、付きまとわれていたり、
そして、強がりながらも涙を流す姿は、
面倒にも感じる人物であり、
決して”良い女”の部類に入るものではないにも関わらず。

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作者名:white12 | 作成日時:2019年11月14日 21時

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