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滲んだ赤_3 ページ40

そうして1分ほどが経ち、
Aはふと今の状況にようやく気付いたように、
パッと、松田から身体を離した。

流れ続けていた涙は、
小さく目を見開くと同時に止まったようだ。
睫毛に溜まった涙に、店内の光がキラリと反射した。


『…ご、ごめんな…さい…』

松田に抱きつくようにして泣いてしまっていたことに対する謝罪か。
Aは、そうしてしまった自分に戸惑っていた。


「…そんなに泣くくらい嫌だったなら、
抵抗すりゃ良かったんじゃねぇのか」

『…』

「…まぁ、男の力にそう簡単に敵わねぇだろうけどな。
そもそも何で店に入れたんだよ。
確か、もう二度と会わねぇって言ってただろ。」

『忘れ物を…して、取りに店に入って、
少しの間だから…って、鍵は閉めてなくて……。
昨日…、も―――』

「昨日?」

『…』

侑斗は昨日店の前に来ていたようなことを言っていた。
松田と一緒にいたところを見られていたのだ。
しかし、Aはそれを口にすることをやめた。

ストーカーをしてきた男のことで、
自宅に送ると言ってくれた松田を拒絶したのだ。

もう、男には頼りたくないと、そう強く思ったはずなのだ。

自分の弱さに嫌気がさしたと同時に、
なぜか冷静になる思考。
Aは頭が冷えてくるのを感じた。

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作者名:white12 | 作成日時:2019年11月14日 21時

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