Rain (2)【名探偵コナン】 (ページ38)

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滲んだ赤ページ38

「…もう関わり合いたくねぇ、って、言われたのにな。
悪ぃな。嫌な思いばっかさせちまって。」

『…え…』

Aの戸惑いを知ってか知らずか、
松田は謝罪の言葉を続けた。

“嫌な思いばかり”。
昨日、拒絶をしたからか。
それに、桜田の事件の際、店に客が来なくなった時期のことをも言っているのだろうか。

「何があったか知らねぇけど、…赤くなってるぞ。唇。」

『…あ、えっと…』

擦りすぎたAの唇は、
擦れてうっすら血が滲み始めていた。

そして、指摘されたのにも関わらず、
やはり無意識か、口元を押さえたかと思ったら再びそれを擦り始めるA。

「――だから、そうやったら傷つくだろうが」

『…』

「あんま傷つけんな。」

制止するように松田に右手首を掴まれたAは、
先ほどまで松田と合わせていた視線を、また、床へと戻した。

松田のタバコのせいで一瞬忘れていたような先ほどの記憶が、蘇る。
じわりと涙腺が緩み始めた。

右手首を松田に掴まれたまま、
今度は左手で唇を擦り始めたAだったが、
それもすぐさま制止されてしまった。

「…何なんだよ。無理に聞くつもりはねぇけど…、
…誰かにキスでもされたのかよ」

『…』

両の手首を掴まれるも、
俯いたままで、再び流れそうになる涙を堪えるようにしていたA。
しかし、松田に言い当てられた事で、
緩んだ涙腺は一気に決壊した。

消したいのに。
消してしまいたいのに。

その唇を拭うことは許されない体勢で、
Aは大粒の涙をボロボロ零し始めた。