禁煙です。_2 ページ37
「悪かったな」
『…いえ。お伝えしていなかったので…』
そういえば、松田はほんのりタバコの匂いがする男だ。
喫煙者なのだろうな、と思っていたのだが、店に通い続けてくれていたときも、
店内で吸う事は無かったため、特に伝えることはしていなかった。
一応、張り紙はしているのだが…
(…わざと、じゃないわよね…)
そうだとすれば、嫌がらせのようなものだ。
「悪かった…、な」
『いえ…私も、慌ててしまって、すみません。』
もう充分換気は出来ただろうと、
松田の身体の横から手を伸ばすような格好でドアを閉めようとしたAだったが、
「そうじゃなくて、…話したくねぇこともあるだろ。
無理やり聞こうとしたみてぇに…、言っちまったから。」
頭上から、喫煙に対するものではない、謝罪の言葉が聞こえ、
ふっと上を見上げた。
そこには、
敢えて言葉にせずとも、
“悪かった”と言っているのが明白な表情をして、
自身を見つめている松田の顔。
そして、ドアを閉めようとしたためとはいえ、
松田と密着するような距離。
目の前には、彼の身体。
今更ながらそれに気づき、
Aは、何だか体温が高くなるのを感じた。
いや、なぜか固まっているAの代わりに松田がドアを閉めたことで、
冷たい風を感じなくなったからだろうか。
侑斗と至近距離になったときに感じた、
ゾワリとした恐怖感のような、嫌悪感は、
微塵もなかった。
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作者名:white12 | 作成日時:2019年11月14日 21時