Rain (2)【名探偵コナン】 (ページ33)

今日:19 hit、昨日:73 hit、合計:382,578 hit

無言電話_2 ページ33

『…あ…』

ふっと入口の方へ顔を向けると、

そこには、息を切らした松田の姿があった。

『…え…、何で…』

「何でって、…電話したのアンタだろうが」

『…えっ…』

電話？
そんな記憶はないAは、事情が分からない。

「まぁ、無言電話…だったけどな。

かけてきたのに、何も言わねぇし。
物音と男の声が聞こえてきたみてぇだけど。
…何かあったんじゃねぇのか？」

Aは何かに気づいたように、
周囲をキョロキョロし始めた。
そして、床に落ちていた自身のスマホを拾うと、

『…あ…』

ディスプレイに映し出されていたのは、松田の電話番号と、”通話終了 00:50“の文字。
通話終了時刻は、約15分前。
まだ、侑斗がここにいた時刻だ。

「…違うのか？」

『…す、すみません。間違えて発信してしまったみたいで…』

「…」

侑斗が来る前、Aはスマホを手に持ったままだった。
松田の電話番号を削除しようと、呼び出したまま、だった。

おそらく、侑斗に迫られている時、
あるいは、強引にキスをされている時に、
誤って発信ボタンを押してしまったのだろう。

『…ごめんなさい、ご迷惑、かけて。』

「いや、迷惑なんかじゃ――」

『…お仕事中だったんじゃないですか？
ごめんな…さ…い…』

あの時、発信ボタンを押してしまったのだろうか。
そう思い返すと同時に、侑斗に無理やり迫られた感覚が蘇る。
突き飛ばしたいのに、身体がそれを許してくれなかった、
その悔しさが。

松田と会話を交わすAの声はだんだんと小さくなり、
怯えているような表情を浮かべた。
そして、無意識か、俯いて再び唇を擦り始めた。