クリスマス_3 ページ29
『え…』
「…こんな遅くまで大変だな」
店に入ってきた男を目に映した途端、
Aはみるみる表情を変え、睨みつけるように男を見据えた。
『…二度と来ないでって言ったはずよ』
それでも、はっきりとそう言葉を投げつけた相手は、
――侑斗、だ。
ちょっと忘れ物を取りに店に戻っただけのAは、
施錠をしていなかった。
もう少し警戒しろと松田を苛立たせるのは、
こういうところだろうか。
「顔が見たくなったんだよ。…クリスマスだからな」
『…勝手なこと言わないで』
「昨日も会いたかったんだけどな。…あの男と会ってたみたいだしな」
『…は…？』
「お前、あぁいう男が好みだったっけ…？」
“昨日”。
“あの男と会っていた”。
松田のこと、だろうか。
店先で話していたのを見ていたということか。
“それでもどっかでアンタのこと見てるかもしれねぇだろ。“
松田に指摘された警戒心の無さ。
でも、見ていたのはあのストーキングをしてきた男ではなく、
侑斗だった、ということか。
「付き合ってるって、嘘なんだろ？とっさについた嘘、だよな？」
『…入ってこないで』
「Aは俺に心底惚れてたもんな？」
『近づかないで。…警察、呼ぶから』
2ヶ月ほど前にここに来たときのように、Aの言葉など聞く耳を持たず、
Aに近づくように、
店の奥へ追い詰めるように、店の中へ入ってくる侑斗。
「…あの時のことまだ怒ってんなら謝るから。だから――」
『そういう話じゃ無いって言ってるでしょ…！
もう、帰って…！』
「A――」
じわじわとAに近づいていた侑斗は、急にその歩幅を大きくし、
一気にその距離を詰め、Aの腕を掴んだ。
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作者名：white12
| 作成日時：2019年11月14日 21時
