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静かな抗議 ページ21

翌日。
クリスマスイブとはいえ、今日は平日。
少し客足が減った14時頃、店の奥では由紀が満面の笑みを浮かべていた。

「わぁ…、良いんですか?」

『もちろん。昨日は休憩に出せなくってごめんね?』

由紀の目の前には、クリスマス仕様に生クリームやチョコレートで飾り付けられたスコーンが置かれていた。


『コーヒーが良い?カフェオレにする?』

「あ、コーヒーが良いです!ブラックのブレンドにめちゃくちゃ合いそうです!
…って、何だかすみません。」

『休憩なんだから、謝る必要ないでしょ?
それに、そんなに褒めて貰って、嬉しいわ。ありがとう』

Aは由紀にニッコリ微笑むと、コーヒーを淹れ始めた。


このスコーンは由紀の言った通り、かなり好評で、
見た目も良いと、何やらSNSで話題にもなっていた。
その影響もあるのか、しばらくして店内は再び忙しくなり、
Aは、休憩を終えた由紀とともに、17時まであくせくと店内を動き回っていたのだった。

そして、由紀が帰った後、少しして店に現れたのは、


『いらっしゃ――』


昨日の男だった。

店内には、一人の女性客。
あまり騒がしくしたくはない。

『…お好きな席へ、どうぞ。』

すっと男が腰を下ろしたのは、やはり入口側のテーブル席だった。
そして注文したのはやはり、ブレンドコーヒー。


(…連絡、した方が良い…?
でも、もしかして謝りに来て...くれた、とか…)

コーヒーを淹れながら葛藤するAは、
エプロンのポケットにそっと右手を入れた。
そして客に見えないように、カウンターの下でスマホのディスプレイを開き、
呼び出したのは、一応登録しておいた松田の電話番号。

しかし、ふと思い返したようにスマホをポケットに戻すと、
平然とした表情でコーヒーを淹れる手を再び動かし始めた。


騒ぎたくない。
おおごとにはしたくない。
ネガティブな思い出を、感情を重ねたくない。


Aには、やはりその気持ちが強かった。
そして何より――

静かな抗議_2→←そういう関係



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作者名:white12 | 作成日時:2019年11月14日 21時

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