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言い訳 ページ15

『ま、松田さん…』

そこに立っていたのは、少し前まで律儀に毎日店に来てくれていた男、
松田だった。

「ここに何か用事でもあんのか?…何でそんなとこにつっ立ってんだ?」

『…え、えっと…』

急に顔見知りの人物に遭遇し、慌て始めるA。
帰宅したところ、だろうか。
あるいは何かの捜査か。

目の前の松田は、やはりどことなく疲れた表情をしていた。


「…なんか、あったのか?」

『あ…、そうじゃなくて、
えっと…松田さんは何でここに?』

「帰ってきただけだ。
自分のアパートにいるのに、″何で″も何もねぇだろ。」

(…やっぱり松田さん、このアパートに住んでるの…?)

あの男に自宅を知られる訳にはいかず、
適当に入ったアパートが、何と言う偶然。
こんな偶然があるのかと、Aは驚いた。
そして、こんな夜に、住人でもない人物がエレベーターの横の壁に隠れているなど、
不審者でしかない。
加えて目の前の男は警察官。

ネガティブな考えが脳裏をよぎり、
Aは慌てて、両手をヒラヒラさせ、口を開いた。

「…で、アンタは?」

『と、友達がここに住んでまして…。ちょっと連絡してたところ…なん、です。』

しかし、そういう言い訳ほど、
他者には怪しく感じるもので。
平然としていれば特に怪しまれる状況でもないのだ。
そして何より、Aはあまり嘘をつくのが得意ではない。

「…へぇ。部屋に行けば良いんじゃねぇの?」

松田はそれ以上追求することなく、
エレベーターの▲ボタンを押した。

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作者名:white12 | 作成日時:2019年11月14日 21時

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