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危険な夜道_2 ページ12

「じゃあ、お先です。お疲れ様でした!」

『うん、遅くまでありがとう。気をつけて帰ってね』

17時を過ぎた頃。
由紀を見送ると、外はもうすっかり暗くなっていた。
暖かい店内との気温差で、うっすら曇った入口の窓が店内の明かりでキラキラと光っている。

『…さて、と。』

腕まくりをしてキッチンを片付け始めたAは、
ちら、と入口側のテーブル席を見つめた。
そこには誰もおらず、
中央の席に1人、中年の男性が夕刊を広げ、コーヒーを飲んでいるだけだ。


――――

『ありがとうございました。』

店にいた中年の男性が帰り、
時計を見やるともうすぐ18時になろうとしていた。

Aは一度、店の周囲に視線を送ると、そのまま店のドアを施錠した。

桜田が刺された事件から3ヶ月。
松田が毎日この店を訪れるようになってから、2ヶ月が経っていた。

そして、相変わらず閉店直後に店を訪れる松田は、
ずいぶんと疲れた顔をしていることが多かった。
それゆえ、Aがハッキリと言ったのだ。
それは、先月のことだった。


“もう、閉店後には来ないでください。”、と。
そして、丁寧にお礼を告げたのだ。
彼なりの誠意で、
1ヶ月以上、毎日店に足を運んでくれたことに。


詳しいことは分からないが、刑事なら夜通し張り込んだり、徹夜で作業することもあるだろう。
大変な捜査を日々続けているのだ。
松田自身が、未だ負い目を感じているのかもしれないが、
Aもまた、疲れた表情を携えてまで店に来続けてくれる松田に、
申し訳ない気持ちが募っていたのだ。


もうすっかり客足は戻っている。
由紀のおかげなのだが、むしろ、前以上かもしれない。
もう、充分ですと。
それから松田は、時折店には来るものの、
閉店後に毎日顔を見せるという事は無くなっていた。

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作者名:white12 | 作成日時:2019年11月14日 21時

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