Rain (2)【名探偵コナン】 (ページ11)

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危険な夜道ページ11

客の男に連絡先を渡された日の夜。
何も連絡しない選択肢もあったのだが、
Aは書かれていた連絡先にショートメールを送った。
自身の電話番号は非通知、として。

“Café Rainの香坂です。
申し訳ありませんが、
個人的にお客様と関わることは控えています。
何かありましたら、XXX-XXX-XXXXにご連絡ください。
またのご来店をお待ちしていますね。”

店の固定電話を記載した、中身は至ってシンプルな営業文句。
そして、客とプライベートな関係を持つことは一切ないという、
断りの文句。

あの男は、ショートメールを送ってから店には来ていない。
好意を持たれていたのかは分からないが、
そういうことだったのかもしれない。

Aは、あまり鋭い方ではない。
職業柄、オーダーを待っている客からの視線には気づくものの、
作業中にこっそりチラチラ見られていたことなど知る由も無く、
せっかくのお客さんに不快な思いをさせてしまったかも、などと考えていた。

明日はクリスマスイブ。
今日から3日間、クリスマス仕様のスコーンを出しているCafé Rainは、
写真を撮って楽しむ客がますます増えていた。

街中も、店内も、何やらキラキラしているこの時期、
Aは忙しい店内で、しかし、何だかいつも以上に楽しそうに笑顔で接客をしていた。

『ありがとうございました！また、お待ちしていますね。』

「ふぅ…、今日も忙しかったですねぇ…」

疲れた声を上げる由紀だが、ニコニコ笑顔を浮かべている。
いつもなら15時に上がるのだが、
先週から忙しくなってきたことを考え、
クリスマス前後の3日間だけ17時まで働いて貰えないかとAがお願いしているのだ。

「それにしても、クリスマススコーン…めっちゃ可愛いです。
あんな風にデコると、違うスイーツみたいですよね。
チョコレートに小さくお店の名前が入っているのも可愛くて、
それにめちゃくちゃ美味しいし…」

『…フフッ。ありがとう。
でも、あれは持って帰れないけど、ね。』

「そうなんですよねぇ…。そこが難点…」

度々スコーンのお土産を貰っている由紀は、冗談めいた表情でニヤリと笑った。