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アテになんねぇ”大丈夫” ページ23

19時過ぎ。
閉店作業を終えたAは、
周囲を警戒しながら店を出た。

あの男が待ち伏せているようなことは、ないようだ。


キラキラと、白や黄色、青などで彩られたイルミネーションが目に入った。
あれは、杯戸シティホテルだろうか。
あるいはショッピングモールの方向…か。

クリスマスイブの今日。
店先の道路を歩く人たちは、何だか嬉しそうに微笑んでいるように、見えた。



「――今、帰りか?」

施錠をし、歩き出そうとしたAは、
今日もまた誰かに声をかけられ、ふと足を止めた。

状況は、昨日と同じ。
しかしAは、微塵も警戒心を覚えることなく、ゆっくりと振り向いた。

『…お疲れ様です』

「あぁ。アンタもな」

もう何度も聞いた声だったからだ。
目の前にいる、松田の、声だ。

しかし、電話番号を呼び出したものの連絡した覚えはない。

『…昨日は、ありがとうございました。
えっと、何かありましたか?』

「あのなぁ。1人で帰るつもりだったのかよ。」

『え…』

「昨日の今日だぞ。もうちっと警戒しろよ」

“お巡りさん”に注意されたAだが、
松田がここにいる理由が分からず、口を閉ざしている。


「もう帰んのか?送ってってやるから。
…あー、どっか行く予定あんなら、近くまで、な。」


そういうことか。
心配してくれている、ということか、と、Aは目を細めた。

そして、”どこか行く予定があるなら”という、松田の気遣いに、
Aは何故か可笑しさがこみ上げてきた。
クリスマスイブ、という今日の予定を配慮してくれているのだろうか。

「…何笑ってんだ。」

『いえ…。ありがとうございます。
でも…、大丈夫ですから。』

そして、
急に真剣な顔に戻ったAに、
彼女の言葉に、松田はため息をついた。

「だから…アンタの”大丈夫”はアテになんねぇ――」

『昨日の男の人、さっき店に来てくれたんです。』

「…は?」

『昨日のこと、謝ってくれました。
その…、彼の好意については…、ちゃんとお断りしましたし。

…もう、大丈夫だと思います。だから――』

Aの話を遮るように、
松田は強引にその腕を掴むと、路地の方へと引っ張っていこうとした。

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作者名:white12 | 作成日時:2019年11月14日 21時

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