Cafe Rain ページ5
数日後。
「ありがとうございました!」
チリンチリンという高音の鈴の音とともに店を出る客にお辞儀をするのは、高倉 由紀。
Café Rainの店員だ。
Café Rainは、
杯戸町に1年前にオープンしたカフェで、
Aがマスターを務める店だ。
店員は由紀1人。
こじんまりとした喫茶店で、
正直なところそこまで店員を雇う余裕があるわけではない。
木目調の素材を基調とした、落ち着く空間で、
少しレトロな印象のCafé Rainには、若者から中高年まで、幅広い層の客が来店しており、カフェというより、純喫茶に近い雰囲気の店だ。
『由紀さん、こっちのコーヒー豆、焙煎終わったから。
後で詰めておいてくれる?』
「あ、はい!了解です!」
キッチン奥で作業をしていたAは、ひょこっと顔を出して由紀に指示をした。
由紀はAより3つ年下で、明るい性格をした可愛らしい女性だ。
笑顔を浮かべながら、テキパキとコーヒー豆を瓶詰めしている。
「そういえば、Aさん。新作のスコーン、好評ですね!あれ、私も大好きなんです。
アーモンドの何とも言えない香りが――」
『それは良かったわ。あれ、結構自信作だったの。』
Café Rainのメニューは、
主に珈琲や紅茶をメインにしたドリンクで、それらに合う数種類のスコーンを提供している。
Aの手作りで、時折新作を出しているのだ。
そんな会話が繰り広げられている店内には客はもうおらず、
コーヒーの良い香りだけが漂っていた。
『由紀さん。それが終わったらちょっと休憩してきて?
奥にスコーンとコーヒー、置いてるから。』
「えっ!本当ですか?やったぁ!」
Aは、由紀の笑顔につられて口角を上げた。
そして――
チリンチリン。
鈴の音とともに、一人の男が店内に入ってきた。
『いらっしゃいませ。お好きな席にどうぞ』
Aが促すと、
すっと男が座ったのは、入口近くのテーブル席。
「コーヒー貰える?」
『かしこまりました。少々お待ちください。』
Aがニコリと微笑むと、男もまた微笑んだ。
さらりとしたその笑みに、肩まである男の長い髪とその風貌に、
Aはどことなく色気を感じた。
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作者名:white12 | 作成日時:2019年11月12日 20時