時間外の常連客_2 ページ29
「…あ、これ…」
『うん。お詫びとお礼。持って帰って?』
「…ありがとうございます!」
由紀はロッカーに入っていた袋を手に、Aにペコリと頭を下げた。
すごく嬉しそうな表情で。
袋の中には、新作のスコーンと、
以前から出しているアーモンドとチョコを組み合わせたスコーンが5切れほど入っていた。
『食べる時は、トースターで1分温めてね?』
「はい!…お疲れ様でした!」
やはり嬉しそうな顔をして店を出る由紀を見送るAは、
同じく嬉しそうに口角を上げていた。
Aは、1ヶ月前、詳しい事情は話さず”しばらく休むことにした”とだけ連絡をしたのだが、
由紀は、SNSの例の書き込みのことを知っていた。
こうなったのは警察のせいだ、と、配慮の足りないあの刑事たちのせいだと、
A以上に怒ってくれたのは由紀だ。
訴えたりして騒ぐつもりはないと言ったAに、
″逆に書き込みを利用して客足を戻しましょう!″と提案してくれたのも由紀だった。
削除されない書き込みたちは、いつまでもネガティブな印象を残す存在ではあるが、
それ以上に、ポジティブな書き込みがあれば良いのだ。
そうして、Café Rainのアカウントだけでなく、自身や友人たちのアカウントを利用して、
コーヒーやスコーンの写真をUPするなど、由紀は積極的に動いてくれたのだ。
その友人たちも、実際度々店を訪れてくれていた。
(こんなお礼くらいじゃ、足りないわね…)
確か履歴書に書かれていた誕生日は、2月だったはずだ。
4ヶ月後。
美味しいケーキと、何かプレゼント出来たら良いな、と考えながら、
Aは、シンクを片付けていた。
354人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:white12 | 作成日時:2019年11月12日 20時