嬉しい言葉_3 ページ26
『…逆にSNSとかそういうツールを使って潔白を証明することも出来ると思いますけど、
…訴えることも。
でも、あまり騒ぎ立てたく無いんです。』
「…」
『…Cafeをオープンするの、夢だったんです。
この店、すごく気に入っていて。
コーヒーや、スコーン。美味しいって、お客さんに言って貰える瞬間、すごく嬉しいんです。
…あまりネガティブな思い出を重ねていきたくないので。』
「…」
この店をいかに大事に思っているかが分かるAの言葉に、
松田は目を細めて下唇を小さく噛み締めた。
『それに、一真…、桜田のことは、私は何も悪いことをしていないとは…言えないので。』
「…いや…そうかもしれねぇが…」
知らなかったとは言え、不倫をしていたという事実は消えない。
Aもまた悔しげに表情を歪めた。
会話を交わす間も、
客が入ってくる気配はない。
静かな時間が流れる店内で、
互いに視線を外したまま、
小さく表情を歪めたまま、2人はしばし黙り込んでいた。
そして、納得がいかないように黙り込む松田に、
Aはゆっくり口を開いた。
『…じゃあ、また来てくれませんか?』
「…は?」
『コーヒー。また、飲みに来てください。
…それで充分ですから。』
松田は、“分かった”と短く答えると、
しかし表情を緩めることはせず、
コーヒーの代金をカウンターに置いて、店を出て行った。
“コーヒー、美味かった。”
という、言葉を残して。
お客さんに言われた瞬間はすごく嬉しいと、Aが言った言葉だ。
Aはカップを片付けながら、泣きそうな表情で、嬉しそうに微笑んだ。
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作者名:white12 | 作成日時:2019年11月12日 20時