Rain【名探偵コナン】 (ページ2)

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夜道の涙_2 ページ2

『…え。あの…、何か。』

「これ、アンタのじゃねぇか？」

文句でもつけられるかと少しだけ身構えたが、男は、
右手の手のひらに乗せた小さなピアスを差し出すようにしてAに見せた。

『あ…、えっと…、違います。』

「でも、これアンタが付けてんのと同じモンだぜ？
それに左耳。外れてるみてぇだけど。」

『…。』

Aは観念したように、少し気まずそうに、男の手のひらからピアスを受け取った。
小ぶりではあるが、雫をモチーフにしたピンクの揺れるタイプのピアスだ。

この路地は、街灯が少なく薄暗い。
A自身、落としたことにも気づかなかったのだが、
右耳に付いたままのピアスと同じものだということに、
そして、左耳のピアスが外れていることにすぐに気づいたこの男に、少しだけ違和感を覚えた。

(…ずいぶん目が良い人。それに細かいところをよく見てる。)

ピアスやイヤリングなど、アクセサリーの細かい装飾や外観なんて、
男性にとってはどれも同じに見えると聞いたことがある。

「暗い道だからな、気をつけろよ。
…泣いてっと、変なやつに連れてかれるかもしれねぇぞ」

『…な…っ――』

子どもに注意するようなセリフに、Aは少しだけムッとするも、
男は、すっと踵を返して反対方向へ去っていった。

(…失礼な男…)

一瞬芽生えた苛立ちは、
受け取ったピアスに視線を落とすと、すっと消えていった。
別の感情に支配されたのだ。

そして、右耳のそれを少し強引に外し、ぎゅっと握りしめた。
やはり悔しげな表情を浮かべて。

大きく息を吐くと、こみ上げてきたのは怒りだ。
Aはバッグからスマホを取り出すと、下唇を噛み締めながらメールを打ち始めた。