夜道の涙 ページ1
(…あり得ない。嘘でしょ。)
先ほど目にした写真は脳裏に焼き付いたまま消えてくれない。
Aは悔しげに顔を歪めながら、米花町の路地を歩いていた。
1つ隣の道からは、数分前まで一緒にいた友人たちの声が聞こえてくるようだった。
9月も下旬になり、夜の風はもう冷たい。
ヒヤリとした風に思考が少しずつ冷静になるも、複雑な感情から自然と涙腺が緩んできた。
(幸せそうに笑ってた…)
すうっと目の端から涙が零れ落ちるも、Aはそれを拭おうとはせず、
俯いたまま、駅への道を足早に歩いていた。
と、その時――
ドンッ
右肩に衝撃を感じ、ふと我に返ったように反射的に顔を上げると、
目の前にずいぶん背の高い男が立っていた。
少しうねった髪の毛と、かなり整った顔立ちをした同世代くらいの男だ。
「…悪ぃ。大丈夫か?」
考え事をしながら、しかも俯きながら歩いてしまっていたのだ。
男が怒っているのかと思ったが、ぶつかったことに対し、自身を心配しているような男の言葉に、
Aは、“…大丈夫です。こちらこそすみません…”
と小さく答えた。
自身の顔をやはり怪訝そうに見つめてくる目の前の男。
涙を浮かべていることに気づいたAは、とっさに視線を外すと、
“すみませんでした”
と、小さく頭を下げ、足早にその場を去った。
しかし、
「――おい…!」
後ろから声がして振り向くと、
こちらに小走りで駆けてくるのはさっきの男だ。
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作者名:white12 | 作成日時:2019年11月12日 20時