疑い ページ10
翌日午後のCafe Rain。
コーヒーを淹れているAの顔を覗き込むようにして、
店員の由紀が近づいてきた。
「Aさん、何かあったんですか?朝から浮かない顔してますけど…」
『…え?ううん、何でもないわよ』
Aは未だざわつく胸を抑えながら、ニッコリと笑った。
「そういえば、昨夜男の人が刺されたってニュースで言ってましたよね…。
帰り…、気をつけてくださいね。Aさん。」
『…そう、ね。ありがとう。由紀さんも、夜道には気をつけてね。』
昨夜、松田が帰ってからすぐにTVでニュースを確認すると、
桜田 一真 (32)が米花町の路上で刺されたと報じられていた。
その殺人未遂事件は当然、今朝の朝刊にも載っている。
Aは、コーヒーを淹れる手を動かしながら、
店の入り口横に置いてある数冊の朝刊にチラリと視線を向けた。
チリンチリン。
視線の先でゆっくりドアが開くと、
「いらっしゃいませ!」
由紀がいつものように元気に出迎えた。
『いらっしゃ――』
続いてAも口を開いたが、入ってきた男を見てその言葉を飲み込んだ。
店に現れたのは松田だった。
その後ろには、見知らぬ女性。
店にまで来るなんて、と、Aは眉をひそめた。
「あ、お好きな席へどうぞ。」
「いや、良い。ちょっとアイツに聞きてぇことがあるだけだ。」
由紀が席に促すも、松田と見知らぬ女性はカウンターの方へと足を進め、
Aに向かって口を開いた。
由紀は、ずいぶん失礼な客だなと訝しげな顔をした。
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作者名:white12 | 作成日時:2019年11月12日 20時