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約束_4 ページ8

「仕事の方はどうだ?
この間、S社の社員の家宅捜索のニュース、ずいぶん騒ぎになってたな」

『…そうね。結構、大規模な横領だったみたいね』


家族だろうが、捜査関係の話をするわけにはいかないAは、
適当にぼかした言い方で、さりげなく視線を外した。
そして、河北とて、それが分かっていないわけじゃない。


「…自分で稼いだと胸張れる金じゃなきゃ、持ってても仕方ないのにな。
どれだけ貧乏しようが、やましい金なんか持つより良いだろうにな」

『…世の中、そんな人ばかりじゃないのよ。
でも、お父さんはお父さんで、あんまり切り詰めすぎないでよ?』

男の一人暮らし。
小さな会社とはいえ、社長の河北だが、
外食は必要最低限で、ほぼ自炊生活を送っていた。
それは、部屋のゴミ箱や冷蔵庫、キッチンを見れば一目瞭然だった。
弁当などのゴミが無い訳だ。



「切り詰めすぎるって…。
料理はなかなか楽しいからな?
前は簡単なものばかりだったが、最近はちょっとだけレパートリーも増えてきたしな。」

『…たまには外食くらいすれば良いのに。
あんまり無理しないでよ?』

「Aの方こそ、詳しいことは分からないが、あんまり無理するなよ?
…その、警察だから、当然…人の命を扱うこともあるんだろうし、な」

『…そうね』

心配そうに真剣な表情を向けてくる河北から、
わずかに視線を逸らしたままで、
そっと手を合わせごちそうさまをするA。


「言えないことは多いだろうが、抱え込み過ぎないようにしろよ?
前にも言ったが、いつでも帰ってきて良いんだからな」


前にも、というのは、
2年前の11月のことだ。
萩原の死をうまく受け止められずにいたAが、
詳しいことは話さないものの、河北に電話をした日のこと。

“お世話になった人なら、
もう、直接伝えられないのなら、
墓前で自分の思いをちゃんと伝えるのが、せめてものお礼なんじゃないか?”

河北のその言葉がAの背中を押し、
松田に会いに行くことが出来たのは事実。

そんな事情は露ほども知らない河北だが、
こうしてAと夕食をともにしながら、会話が出来ることに、
笑みを浮かべるAに安堵していた。

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設定タグ:名探偵コナン , 松田陣平 , 萩原研二   
作品ジャンル:アニメ
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white12(プロフ) - 夢蜂さん» そう言って頂けて本当に嬉しいです。本作は、どうしてもスピンオフとして過去を描きたくて執筆した作品でした。スピンオフなので既にその先が分かっているが故の切なさもありつつ、若き頃の夢主を楽しく描いておりました。嬉しいコメント、ありがとうございました! (2020年2月20日 17時) (レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
夢蜂(プロフ) - 強くも弱い主人公ちゃんに、つい涙が出ました。面白かったです! (2020年2月19日 21時) (レス) id: 269f71c012 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:white12 | 作成日時:2019年9月10日 14時

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